こうして約1年。
イギリスは日々楽しみにしていたスペインの姿を見られる世界会議にすら出られずに、すっかりスペイン不足だ。
あれは実はエイプリルフールの嘘でした…と告げるにはもう日数がたちすぎていて洒落にならないので、いまさら言えず、どうせなら今年のエイプリルフールにものすごいネタを持ってきて、去年のアレをうやむやにしてしまおうと、そんな野望を持って、イギリスはネタ作りに頭を悩ませていた。
そんな午後、事件は起こった。
個人でチャーターした飛行機が墜落したのだが、問題はそれが国内の大手の財閥の当主の機で、当主夫妻が亡くなってしまったという事だ。
夫妻には生まれたての子どもが一人。
事故か事件かわからぬ墜落で、その子どもを犯人もいるかもしれない財閥の中に放り込むのは危険である。
普通の家ならとにかく、イギリス国内でも有数の財閥となれば、おかしなことになれば国内に影響が出かねない。
とりあえず相談がしたいので来てほしい…という政府の要請を受けて、イギリスは急いでスーツに着替えると、首相官邸へと急いだ。
そして結論から言うと…引き取ってしまった。
正確には、子どもが18歳になるか適切な後見人が見つかるまでという期間限定で。
なんでそんなことになったかと言うと……似ていたのだ。
亡くなった当主夫人はスペイン人で、子どもは生まれたてのくせに割合とふさふさの茶色がかった癖っ毛にイギリスのモノより深い色合いの緑の目をしていた。
そう、赤ん坊はどこかスペインに似ていたのだ。
似ている…と思った瞬間、人の世の地位や名声などには無縁の国の化身であるイギリスの元が一番安全で、イギリスにしても自分の体とも言うべき国内が荒れるのは好ましくない…と、周りに向かって主張を繰り広げていた。
長い時を生きてきたので子育ての経験もなくはないし、幸い最近は会議なども兄達がでてくれているから仕事は自宅ですればいいと言えば、途方にくれていた面々から反対意見が出ることはなかった。
こうしてイギリスは期間限定とはいえ、スペイン不足を補う存在を手に入れたのだ。
子どもの名はアンジェリカ。
アンジェリカ・カークランド…それが今日から政府が用意したこの子の仮の戸籍である。
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