こうして不本意な諸々で始まった今回の旅立ちはやはり不本意が続いた。
まず服装だ。
イングランドからすればプライドも何もない事に腹立たしいのを通り越して呆れかえるばかりだが、国王は馬子にも衣装、野性児にもそれなりの格好をさせれば洗練されて見えるとご満悦だ。
そのくせ、そんな風に衣装にはこだわりを見せるくせにスペイン王国へと渡る船は随分と年代物で、さらに悪い事にはスペインに着く直前、嵐でマストが折れて動かなくなった。
それでなくとも水などせいぜい森の泉くらいしか知らない…当然のように泳げないイングランドは船が揺れるたび恐ろしさにすくみあがったというのに、船が故障などという事態に陥って自国の国王を心底恨んだ。
不幸にしてなのか幸いにしてなのか、故障したのはスペインまであと少しというところだったので、小舟で修理に少し時間がかかるので到着が遅れると出した使いは、あろうことか、スペインの立派な船で国体様を連れて戻ったらしい。
遠くに聞こえる騒ぎに、船室の奥でイングランドは、それでなくても不本意であろう結婚にこんな手間暇をかけさせた事でさぞや不機嫌になっているであろうスペイン王国の国体を思って、恐怖にすくみあがった。
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