「あかんっ!アーティ、親分にチェンジしっ!!」
「馬鹿ッ!それじゃあ練習になんねえだろっ!!」
「せやかて、危ないでっ!!」
「ん~もうちょいっ!!」
行く先々で待ち構える鬼達。
それを倒して行く間、アーサーはギルベルトとフランシスを使う練習をしている。
今日はギルベルトを使ってみる日だったが、どうも上手く行かない。
原因はどう考えても自分にあると、アーサーはうなだれた。
「いや、俺様が上手く誘導できてねえんだ。ご主人のせいじゃねえよ。悪いな」
と、ギルベルトは言ってくれるが、動きがスムーズに行かないのは、アントーニョの時と違ってどこか緊張の解けない自分がギルベルトの動きを邪魔しているせいな気がする。
おかげで鬼は倒せたものの、ギルベルトは傷だらけだ。
フランシスの場合もぎこちなくなるのだが、こちらは空からの攻撃で避けるのは容易なので、倒すのに数倍時間がかかるだけですんでいる。
だから当面の問題はやはりギルベルトとの連携だ。
「もうええやん。ずっと親分がエスコートしとったら」
うなだれるアーサーの頭を引き寄せてコツンと自分の胸元に寄せるアントーニョに、フランシスは呆れたように
「お前が坊っちゃん独占したいのはわかるけどね、そういう問題じゃないのよ?
鬼ヶ島についちゃったら陸地だからね?水ないからね?
ギルちゃん使えないと困るでしょ?」
と、その手を外させようと手を伸ばして、アントーニョの空いている方の手で振り払われる。
「別に親分かて水以外で戦えんわけやないで?」
「そうだけど、目的は鬼を倒す事じゃなく門の封印だからね。
倒しても倒してもキリがないんだから、ちゃっちゃと門まで辿り着かないとだし、それにはギルちゃんの陸地での足の早さが必要でしょ」
二人がそんな言い争いをしていると、ギルベルトが
「ちょっと薪集めてくるわ。今日野宿だろ…」
と立ち上がった。
それに対してふたりとも当たり前に手をふって送り出す。
大体においてそういう雑用を率先してやるのはいつもギルベルトだ。
「ギル、俺も手伝うっ!」
と、そこでアーサーがアントーニョの腕から抜け出すと、
「ほな、親分も…」
とそれを追おうとするアントーニョにアーサーは
「待てっ!!」
と命じる。
ドッグ…という属性のせいだろうか…それでショボンと肩を落としつつも、その場で待つアントーニョ。
それを横で笑うフランシスを思い切りどついている。
一方でギルベルトは少し驚いたように振り向いたが、すぐ困ったように微笑んで
「いいよ。疲れてんだろ。休んでろよ、ご主人」
と、またクシャクシャと頭をなでた。
そういえば…アントーニョはもちろん、アーサーをご主人と呼ばず坊っちゃんと呼ぶフランシスですら、そんな風にすることはない。
やたら頭を撫でるのはギルベルトだけだ。
「少し歩きたい」
と、それでもアーサーが言うと、
「ん。じゃあ俺様の側から離れねえでくれよな」
と、ギルベルトはアーサーに並ぶように歩き始めた。
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