泣いた…ことはある赤鬼1

なんやこれえぇぇ~~!!!

かっわかわええっ!!!

拾って下さい



夕方の田舎道、そんな看板と共に箱の中に捨てられているのは子犬ほどの小さな生き物である。

犬や猫などの種族名を言わないのは、それがいわゆるよくいる動物ではなく、大きさはそれには随分と小さいが見た目は人間の子どものような謎の生き物だからだ。



人間と違うのは、その黄金色の髪の合間から伸びた小さな小さな赤い角。

左右に1本ずつ、それは遠目にはまるで少女達の頭を飾る髪留めのようにも見えたが、確かに頭から生えている。



万が一雨が降っても直接当たらないように大きな木の下にその箱はあり、その小さな体が冷えきってしまわないように箱の中には布地が敷き詰められているところを見ると、捨てた相手のその生き物への愛情が感じられた。



アントーニョが畑で取れた野菜を中心としたものを大きな街に売りに行った帰りに発見したのは、そんな不思議な箱だったのだ。



くぅくぅと身を丸くして眠っている生き物…もとい小動物のふっくらした頬には涙の跡。

随分と長く捨てられてて心細さに泣いていたのだろうか…と思えば、拾わないという選択はない。



――おい、待てっ!!得体の知れねえモン拾って、危ないモンだったらどうするんだっ?!

と、いつもなら止めるであろう5年間ほど預かっていた育て子も、今はいない。



何故か知人達の子どもの預かり所のようになっていたアントーニョ宅に預けられていた育て子達も最初は3人ほどだったが、一人減り、二人減り、そして、1年前、一番小さかった最後の育て子が16になって独り立ちしてしまった。

そんな寂しさにそろそろ耐えかねていた矢先の事である。



サイズこそ人間にしてはあまりに小さく角が2本ほど生えているという、少しばかり(…なのか?)変わったところはあるが、小さな小さな可愛らしい子どもである。



そ~と抱きあげて頭だけ出るようにして外套に包んでやると、ふわぁ~と小さなあくびを1つ。

起きるかな?と思ったらまたコテンとアントーニョの外套の襟に頭を預けて眠ってしまった。



そこでゆっくりとまた家路をたどるアントーニョ。



スヨスヨと可愛らしい寝息をたてて眠る小さな子どもはいつのまにか外套の襟を押さえるアントーニョの手にチョコンとその小さな手を乗っけて指先をきゅっと掴んでいて、その愛らしさは叫びだしそうになるのをこらえるのが大変なくらいだ。



こうして村外れにある自宅まで帰り着くと、アントーニョは背負子に背負った大きな荷物を背負子ごと床におろし、手に下げた袋は机に置いた。



そして…悩む。

この子をどこに置こうか…。



指を掴んでいた手は荷物を置く際に襟元に移動させたが、今包んでいる外套を脱げばさすがに目を覚ましてしまいそうだ。



まあずっと眠っていられても困るわけだが、あまりに気持ちよく眠っていられると起こすのが忍びない。

仕方なくアントーニョは外套を身につけたまま、片手でしっかり子どもを抱えた状態で、囲炉裏に火をおこした。






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