青い大地の果てにあるものGA_12_3

「あっちゃあ…イヴィル1体計測漏れかよ。
ま、いっか。俺様一番左のイヴィル1体と雑魚引きつれて左に思い切りそれるから、真ん中のイヴィルをフェリちゃんで、ルッツはフェリちゃんのフォロー、梅は右な?」

「了解ネ。任せてっ!」
「了解した」
「うん、わかったよ」


実際に出動してみれば、2体と言っていたイヴィルが1体増えて3体になっているが、雑魚担当予定だったギルベルトからすれば、その他に1体くらいならイヴィルが付いて来ても許容の範囲だ。

そう指示をすると、3人はそれぞれ快諾する。


「じゃ、俺様が左のイヴィルに剣投げて即左に飛んだタイミングでフェリちゃんは弓着弾させて戦闘は少し後方。
梅は逆にイヴィル前に跳躍&着地。戦闘はその場な」

「「「了解っ」」」

と、とりあえずいつものようにギルベルトが淡々と戦闘する位置決めまでして全員が己の役割を認識したところで、

「じゃ、そういうことで!
モディフィケーション!!」

と、ギルベルトは自分のジュエルをアームス化。
他もそれに続いた。



「攻撃開始。3・2・1・0!!」

カウントしてギルベルトは左前方に跳躍しながら、器用にアームスをクルクル回転させながら左側のイヴィルに投げつけて、イヴィルにかすったそれをさらに左前方の着地点で受け止める。

すると敵全部が一瞬左へ行きかけるが、梅が跳躍して右イヴィルをその場に留めた…が、真ん中を取るはずのフェリシアーノの矢が何故か来ない。

「フェリシアーノっ!何してる?!!」

と、ルートは一瞬後ろを振り向き、フェリシアーノに声をかけるも、フェリシアーノは涙目でふるふる首を横に振っている。

「くそっ!」

そうしている間にも真ん中のイヴィルも梅に向かって行くので、ルートは剣を構えて前方へ駆けだして行く。


待ってっ!!ルートも梅も待ってえぇぇっ!!!!

反射的にイヴィルに剣を振りあげて走るルートにいきなりフェリシアーノが後ろから弓を放った。

うおっ!!!

それはルート本人ではなく、振りあげた剣先を狙ったものではあったが、いきなり後ろから味方に…しかもフェリに矢を放たれて動揺するルートに、イヴィルが迫る。

隣の梅もどこか動きがおかしい。


ブン!!と、木の枝のようなものがルートの肩先をかすめて血しぶきをあげた時点で

フェリちゃんっ!!何やってんだっ!!!

と、さすがに異常に気付いたギルベルトは自分の側のイヴィルと雑魚を引きつれたまま中央に戻って、ルートに迫る第二陣の枝を叩き斬った……

………
………
………

そして気づく。


「…こ…れ………?!!!」

左右のイヴィルは普通の何の変哲もないイヴィルだ。

だが…真ん中のイヴィルは………


「そのイヴィル、フリーダムのユージンだよっ!!殺しちゃやだっ!!!


後方からフェリシアーノの悲鳴。


ああ…そうだ…
全身木のモンスターのように見えるが、幹の部分から覗くその顔には見覚えがある…。

数日前から敵の基地の調査中に行方不明になっていたフリーダムの部員…。
ジャスティスはフリーダムと行動を共にする事が多いので、覚えている。

覚えているどころか、つい数週間前には一緒に酒を酌み交わしさえした…。

…敵…なのか……仲間なのか……
…倒す…のか?

もう10年以上もこの仕事についてからたっているが、ギルベルトは初めて剣を振るう事を躊躇した。

そして途方にくれる。

その一瞬に連れて来た雑魚が梅やルート、そして自分の方に牙を剥く。

――まずいっ!!!

と、慌てて剣を持つ手に力を入れた瞬間…


ふわりと香る花の香り。

3方に散っていた雑魚がまとめて前方にふっとばされた。




――雑魚は抑えておく。お前なら…やれるよな?ポチ

いつのまにか何故か追って来ていたらしいその相手の声に雑音だらけで働かなかった頭がす~っとクリアになった。

薔薇の花弁を残して雑魚を引きつれて前方に向かう麗人に感謝をして、ギルベルトは剣を握り直すと、目の前のイヴィルの首を一息に刎ねた。

後方で聞こえるフェリシアーノの悲鳴。
梅とルートが息を飲む。

そのまま自分が担当していたイヴィルも数撃剣を交わしたあと斬って捨てると、

「俺様…タマから雑魚受け取って片付けてくるから、梅は自分の担当。
ルッツは…梅のフォローしろ」

と、厳しい声で言って前方のアーサーの元へと向かった。




ギルベルトが向かった時にはアーサーはローズウィップで上手に雑魚を交わしつつ、半数くらいは片付け終わっていたので、残りを引き取って全て倒す。

そうして2人で梅達の方へ戻った時には、梅もルートのフォローを受けながらも最後の一体を倒し終わっていた。



…アズビフォア……

震える指先…
命じるまま剣の形からペンダントに戻るジュエルにどことなくホッとする。

しかし…追い打ちをかけるように

「ギルっ!ひどいよっ!!なんで仲間を殺したのっ?!!」
と、後方から走り寄って来たフェリシアーノの涙の抗議に言葉が出ないギルベルト。

本当に途方にくれた…。



何故?
…それは自分だって聞きたい。

どう答えれば良いんだ?
フェリシアーノと違って泣く事も出来ず佇むギルベルト。

しかし思わぬところからフォローが入る。

表情には出さないが珍しく動揺中のギルベルトの代わりに、アーサーが淡々とした口調で言い放った。

仲間だ。
そして…元仲間でも今は敵だ。
倒さないと今の時点での味方に被害が出るし優先順位を間違えるな」

そしてギルベルトに

「…とりあえず真ん中のイヴィルの遺体だけは基地に持ち帰ってブレインに検証してもらおう。
その結果次第では色々戦術が変わってくるだろうから…」

と、自分はその頭部を持ち、ギルベルトとルートに身体を運ぶように指示をした。



こうして勝つには勝ったが…あまりに重い勝利にジャスティス達は言葉もなく基地へと帰って行った……


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