そしてニューイヤーパーティ当日…
「感想は?」
と、にっこりと目の前で微笑む恋人。
それを見て絶句するジャスティス最強。
「…世界で一番可愛い…」
しばらく見惚れたあとに、出た言葉。
本当にそれしか思い浮かばなかった。
レースに縁取られた襟元には金の刺繍。
右の胸元には銀で出来た十字架のブローチ
そこから薄いレースのドレープが広がり、左手首の細い金のブレスレットの小さなルビーが組み込まれた繊細な金の蝶へと伸びている。
チュニックから出た細い足はやはり真っ白なレギンスに包まれていて、足首には手首とお揃いのアンクレット。
地毛と同じ色の落ちついた金色のロングのウィッグは毛先だけ柔らかなウェーブを描いていた。
そしてなによりギルベルトを感動させたのは…そのウィッグにふんわりと載せられた花冠…のしたの真っ白なレースのヴェール。
「…花嫁みてえだな……」
と、ため息交じりに言うギルベルトに
「永遠の愛と誠実でも誓ってみるか?」
と笑う恋人。
そんなもの…とっくに誓っていると言うと、じゃああとはやる事は一つかと言うので、思わずグイッと引き寄せて顔を近づけたら、唇が触れる瞬間に手のひらで遮られた。
「キスじゃすまなくなるだろ?ポチ。
パーティ終わって汚しても良くなってからな?」
と言う笑顔が愛らしくも小憎たらしい。
「…まあ…確かにそうだけどよ……」
と、唇を尖らせると、新年と言う事で少しばかり浮かれた気分なのか、恋人はとても楽しげに笑った。
パーティは夕方6時から。
当日までのお楽しみと言われて今日初めて見る衣装。
アーサーの衣装を作った医療班の女性陣は当たり前にギルベルトの分も作ってくれている。
ギルベルトの衣装はデザイン的にはシンプルだが黒地に金の刺繍が入っていて、左肩にはアーサーとお揃いの銀の十字架。
こちらもそこから流れるように黒いドレープが広がり、右手首の金のブレスレットのペリドットが組み込まれた蝶へと伸びている。
もちろんピッタリとした黒い布地に覆われた足には同じデザインのアンクレットが光っている事は言うまでもない。
一見対極の色、対極のデザインながら、ポイントポイントが対になった形の衣装。
一目でペアと分かるのが嬉しい。
2人が着替え終わって自分達の控室を出ると、
「うわぁ~。アーサーとギルの方も素敵だねぇ♪」
と、こちらもご機嫌で短めの白いドレスをまとったフェリシアーノと少し困った顔でそれに付き添うように立つルートヴィヒ。
フェリシアーノの衣装は裾の長さ以外はほぼアーサーと同じだが、胸元の十字架の代わりに中央にデージーの留め具のついた真っ白なケープ。
ルートヴィヒの方は黒い軍服のようなデザインで、胸元にまるで勲章のようにフェリシアーノとお揃いのデージーの花がついている。
「俺はどう?似合うっ?!」
じゃ~ん!と嬉しそうに手を広げてクルリと回るフェリシアーノは傍から見ても微笑ましい。
「この服自体も可愛いけどさっルートとペアって俺すごく嬉しいよっ♪」
と言ってルートヴィヒに抱きつくフェリシアーノ。
「じゃ、会場まで一緒に行こうよ~♪」
と、ルートの腕に手をかけたフェリシアーノがもう片方の手でアーサーの手を取ると、ギルベルトは
「じゃ、行くか~」
と、手をかけやすいように少し自分の肘を曲げて、アーサーをうながす。
それにアーサーが手を添えると、ちょうど白い二人を黒い二人で挟む形で、4人揃って廊下を進んでいった。
そしてそのまま歩いていると、アントーニョに引きずられるように部屋から出て来たロヴィーノも合流。
こちらは…なんとブローチのモチーフがトマト。
なのに滑稽に見えないどころか、オシャレなワンポイントに見えるところが、レディ達の努力の結晶だと4人は感心した。
こうして6人3カップル揃ったところで、そろそろ時間だと言う事で広間へと急ぐ。
そして…会場の広間……
スタンダードなタキシードの面々の中でいきなり現れた舞台衣装のような派手やかな衣装の6人に会場がわぁっと沸き立った。
その会場に満足気にはしゃぐ乙女達を見て、あまりに多かった休暇願いの理由を察したフランシスは苦笑する。
そこで別に責めるとかではなく、ただ単に独り言として口にしたフランシスの
「もしかしてさ…お兄さんのとこの女の子達にやたら休暇願いが多かったのはこのせいなのかな?」
というつぶやきを拾ったギルベルトは、
「あ~…そうだよな…。これだけのモン作るって事はそれだけ時間が要るもんな…
悪いフラン。そこまで考えてなかった」
と手を合わせた。
しかし
「いえっ!私達がどうしても作りたくて作ったんですっ!部長ごめんなさいっ!」
と、そこで可愛い可愛い部下のお嬢さん達に割って入られたら、それでも苦言を呈せるフランシスではない。
「いや。なんかお嬢さん達が楽しめたなら、お兄さんお留守番頑張った甲斐があったよ。
いつも皆頑張ってくれてるからね~」
今日は思い切り楽しんでねという言葉と共にニコやかにそう部下達に声をかけた。
部下がほぼ全員女性と言うのもあって、フランシスはいつもとても部下に優しい。
医療班のお嬢さん達も皆、自分達の推しの次に上司であるこの医療本部長が大好きだ。
「俺は今回は色々言う権利はねえけど……お前…相変わらず部下に甘いよな…」
ため息まじりにそう言うギルベルトに、フランシスは
「お兄さんの部下はみんな働き者だし世界一良い子達だからね。
どうせなら気持よく働いて欲しいでしょ?」
と、パチ~ンとウィンクをしてみせた。
そんな中、カウントダウンのあとに乾杯、そして最初の音楽が鳴り始めると、当たり前に自分の側を離れようとするロヴィーノの腕を
「どこ行くん?!」
と、アントーニョはつかむ。
「どこって…お前は適当にパートナー見つけろよ」
「なんでそういう事いうん?」
「いや…だって音楽かかり始めたし?踊るもんじゃねえのか?」
「踊るで?でもなんで他の相手見つけろとか言うん?」
「いや…いくら女の格好してたって、普通女性と踊る方が楽しいだろ?」
当たり前に言うロヴィーノに、アントーニョはピシっと少し離れた場所でルートと楽しげに踊るフェリシアーノを指さした。
「……フェリは特別。ルートだって困った顔してるじゃねえか。」
「してへんで?あれはルートの地顔やっ。」
「いや、お前それは失礼…」
そんなやりとりをしている2人や、ひっそりと楽しく和やかに踊っているルートとフェリシアーノを尻目に、フロアのど真ん中で喝采を浴びているのは、攻撃特化のジャスティスの筋力に物を言わせたアクロバティックなダンスを繰り広げているギルベルトとアーサー。
「ほれ、あれ見てみい。
お姫ちゃんかてノリノリやで?」
と、その歓声に思わず視線を向けたロヴィーノにそう言うと、アントーニョは強引にその手を取ってフロア中央部へと向かった。
「今日は祝賀会やし、無礼講や。楽しまな損やで?」
と太陽のような満面の笑顔を向けられて、
「楽しいのはお前だけだろ…」
と呆れたように言うものの、諦めてそのリードに合わせようとした瞬間……いきなり警報が鳴り響いた。
「え??!!!」
会場が騒然となる中、警備の担当者が会場に駆け込んでくる。
「敵がもう1km先に迫ってますっ!イヴィル2、雑魚10。
すぐ出れそうなジャスティス4~5名即向かって下さい」
「まじか…せっかくこれからだったのに……」
ここでアーサーが立候補しないなどという可能性はほぼないだろうと、ギルベルトはステップを止めてがっくりと肩を落とした。
案の定
「わかった。すぐ行く!お前も行くよな?!」
と、警備に応えて、ギルベルトを振り返るアーサー。
「タマ行くんだったら俺が出ねえとかありえねえだろ」
と、すでに戦闘用の顔で応じるギルベルト。
「…女性陣は…その格好じゃ出れねえよな?」
と、長いドレスのエリザと着物の桜に目をやって言う。
「あたし出れるネっ!」
と、短いチャイナ服の梅はそう言って綺麗に流していた髪をぎゅっと後ろで結んだ。
「わりいな、梅。あとはフェリ、ルート行ってくれ。
アーサーはその服ちと裾長くてあぶねえな。
どうしても出るなら着替えて合流な」
と、最終的にロヴィーノがそう言うと、
「ああ、もちろんそのつもりだ。お前も行くよな?」
と、こちらはルートヴィヒが真面目な顔で頷いてフェリシアーノに促した。
それに対して
「うん♪ルートが一緒ならいいよっ♪」
と、フェリシアーノがペターっとルートヴィヒに抱きつく。
しかしアーサーに関しては
「ん~じゃあタマ残ってろよ。雑魚は俺が殺るから。
で、梅とフェリちゃんでイヴィル一体ずつで良いだろ?
せっかく着たのに着替えんのもったいねえ…」
とギルが言う。
「ポチ…お前……」
呆れた目を向けるアーサーに、ギルベルトは、だってよぉ…と、口を尖らせる。
(…終わったらそのままヤラセてくれるって言っただろ)
と、耳打ちされて、やっぱりそれか…と、アーサーはため息をついて両手をあげた。
「おっけぃ。
じゃ、気合いいれて倒して来いよ?
ぐずぐずしてるとこのまま駈けつけてドレスに思い切りモンスタの血つけるからな?」
「やめろぉぉ~~!!!」
慌てて言うギルベルトに全員苦笑。
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