太陽の昂揚
宝玉に選ばれて舞台で主役を演じ始めて早1年。
その間かなりの数の舞台をこなしてはきたのだが、今回の舞台ほど心踊る舞台はいまだかつてない。
なにしろ今回は…愛しい愛しい対である月の宝玉の適応者との初共演なのだ。
初めて会ったのは小雨の降る校舎の中庭。
透明感のある声で一人楽しげに歌うその様子に一目で恋に落ちた。
愛おしい…そう思えば一瞬足りとも離れている事など耐えられず、何もわからず大きなペリドットを驚きに丸くする少年を抱え上げて、自分のテリトリーである離れの宿舎へと連れ去ったのだ。
それからはまるで毎日が夢のように幸せだ。
朝…目を覚ますと、かすかに重みを感じる左腕の上には小さな金色の頭。
スン、と、その髪に顔をうずめて息を吸い込むと、バラと紅茶の良い匂いがする。
朝は自分の方が早いから、その愛しい少年の、この世のどんなに高価な宝石より美しい1対のペリドットは白い瞼の下に隠れているが、その代わりに驚くほど長い金色のまつげが白い顔をキラキラと輝かせている。
しばらくその愛らしい寝顔を堪能したあと、今度は花がほころぶような笑顔を見せて欲しくて、身支度を済ませてキッチンに。
細いのに朝は意外によく食べる愛しい愛しい半身のために、とびっきりの朝食を作って、寝室まで運んでやる。
――おはようさん、朝やで~
朝食のトレイをいったんベッド脇の小テーブルに置いてそう声をかけつつ、柔らかいバラ色の頬に口づけを落としてやれば、寝起きがあまりよろしくないアーサーは、しばらくぼ~っと焦点の定まらない目をアントーニョに向けるのだが、その様子も本当に小さな子どものように邪気がなく、可愛らしい。
ああ、そうだ。
アントーニョの対は何をしてもこの世の中で一番可愛らしいのだ。
そんな素晴らしい対を持った自分は世界で一番の幸せ者だと、アントーニョは断言できる。
こうして日々幸せな気分で対との初共演となるラブロマンスの練習に励み、ついに明日、本番を迎える事になる。
本当はそんな可愛らしいアーサーの姿を舞台で晒して他の人間に変に興味を持たれたくはないのだが、どちらにしても、あれだけの可愛さだ。
街を普通に歩いているだけで、皆が惹かれるに違いない。
それならいっそ舞台の上で、アーサーは自分の対で、心身ともに完全に自分の物なのだと世界中に知らしめた方が良い気がする。
こうして舞台本番を明日に控えた今日、本番と同じ衣装を身につけての舞台稽古と相成った。
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