ぺなるてぃ・らぶ・アナザー6章_4

塞がれた退路


とりあえずイギリスが色々考える前に、通常なら郵送などで時間のかかる外国人との婚姻する際の書類を一式即自宅に届けてもらえるように秘書に電話する。

いきなりの祖国の結婚宣言にさすがに秘書も驚くが、

「国やなくて個人の戸籍の問題やからええやろ~?
国の事情は俺に影響するかもしれへんけど、逆はないんやし?」
と言う言葉であっさり納得してしまうのは、おおらかなお国柄のせいなのだろうか?
秘書との通話を切って、

「明日の朝には届けてもらえるさかい、あとはイギリスの戸籍謄本とか在留届済証明とかを在スペイン英国大使館に貰えばおっけいや。
なんなら朝連絡入れとけば祖国特権で昼には全部用意してもらえるやろ?
そしたら午後は晴れて籍入れて指輪買いに行けるやん。」
と、にこやかに言われた時点で、さすがのイギリスもはっとした。

「ちょ、ちょっと待てっ!!!」
何故普段の仕事や会議などはのらりくらりしているくせに、こんな時ばかりここまでテキパキと仕事が早いんだ?!
この手際の良さを会議で発揮すれば、ドイツの眉間のシワが確実に減るのは間違いない。

いや、今はドイツの眉間のシワなど気にしている場合ではなかった。
何故いつのまに明日結婚するとかそんな話になっているっ?!
「あ、あのっ!!」
とにかくストップをかけようと口を開いたイギリスの声は、スペインの
「いやぁ~、最初は驚かれたけど、秘書のカルロスにもいっつも私生活注意されとるさかい、これで落ち着きはるなら、まあ一安心ですわ~とか言われてもうた~。」
という、すでに第三者に認知された事を示す言葉の前に消えた。

どうしよう…今更あれはなしで…とか、出来ないんじゃ?
一応祖国なわけだし、それが他国に結婚すると騙されたとか…まずい…。
冗談とかじゃすまされないよな……。

英国がスペインを騙して関係がこじれにこじれまくったという意味では、イギリスはかなりトラウマを持っている。

本当にどうしよう……。

「あの…スペイン……」
そんなつもりじゃなかった…と、あまりにおおごとになった事態に、スペインに謝罪をしようとツンツンとその素肌の上に直接羽織ったガウンの裾を引っ張ると、

「大丈夫やで?誰にも文句は言わせへんし、万が一文句言うてくる奴居っても全部親分が対応したるからな。
イギリスはなんも心配せんでええ。親分が守ったるからな。」
と、太陽のような笑みで頭を撫でられ、思わずコクンとうなづいてしまった。

いや、ここでうなづいちゃダメだろ…という理性の声が脳に届いたのは、あまりに時間が経ちすぎた翌朝だった。

あれ?なんでこうなってるんだろう?
おかしい…。

ホラー映画を見たから一人じゃ怖いというイギリスの言葉を信じたスペインは、明日には籍をいれることだし、それまではキチンとしたいと、律儀にイギリスをベッドに寝かせて、寝付くまではすぐ横の椅子に座って、寝付いたらそれでも姿が見えるように大きめの椅子を並べて寝るという。

ホラー映画自体が口実だったわけだし、そこまでしないで良いとイギリスは言ったのだが、そこで驚くほど優しい目で

「ん~。でも政策やない、個人の意志で初めて持つ嫁さんやさかいな。
……大切にしたりたいんや」

と、頬を撫でられて、無言で赤面させられた。


かつてこんなに誰かに大事にされたことがあっただろうか…。
ああ…ほだされてしまいそうだが……一つ問題が……と、イギリスは内心頭を抱える。

これは…フランスとの罰ゲームで、自分はスペインを騙しているのだ。


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