トマトとティディの化かし合いから愛は生まれるか?
――親分のモンになったって?
最初
『なぁ、自分もう親分のお宝ちゃんになり?』
と言って
『わけわかんねえ…』
と返された。
ぬいぐるみに顔をこすりつけながらそう言う姿があまりに可愛らしくて、いっぺんの余地もなしに自分が悪い気がした。
可愛いは正義だ。
そう言っていたのは確か東の島国だったか…。
スペインは今、心の中でそれに思い切り同意した。
そしてイギリスをひょいっと横抱きにしてベッドに運んで座らせると、その前に恭しく膝まづく。
そしてその白い手を取り、指先に口付けながら、改めてそう懇願してみたのだ。
白く小さな顔を見上げて言うと、怯えたように淡いグリーンの瞳が揺れる。
ビクっと一瞬身をすくめたイギリスの指先を軽くあま噛みしてやると、驚いたように手を引っ込めようとする。
が、それを許さず手を握ったまま自分の方が近づいて行くと、小さく息を飲む音が聞こえた。
可愛え、可愛え、可愛え!!!
――うん…て言うたって?
と、わざと耳元で低くささやいてやると、白い耳が真っ赤に染まる。
どうしよう?と逃げ道を考えているのがまるわかりな動揺っぷりに、内心、逃がしてはやらへんで?と、ほくそ笑む。
「あ、あのなっ、ごめんっ、俺…お前の事好きだけど、付き合えないんだっ。
告白は好きだって伝えたかっただけで……」
という、突っ込みどころ満載なセリフに、
「好き言う以上に大事なわけなんてないんちゃう?」
と、返してやると焦ったのだろう、不思議国家だから女になったり子どもが出来たりするかも…とか、もうそれ回避する気ないん?と言いたくなるような、不器用にして斜め上な言い訳を始める。
まあでもこの子がもし女になったり子どもが出来たりしたら…と考えてみると……
うん、無問題やわ。子ども出来たら逃げられへんやん。
という結論に至る。
別に女性体でも男性体でも問題はないが、身体を暴くだけでなく、その体に自分のモノだという証を残せるのは悪くはない。
性別以前に国なので子どもというのはありえないのだが、本当にそんなことが起こりうるなら子どもが出来るまでは拉致監禁で全て解決である。
子ども好きのイギリスだ。
例えそれがどういう経過で出来たのであろうと、子どもを産まないという選択はないし、おそらく子どもの父親を切り捨てるということは出来ないだろう。
そんな事を結構本気で思ってみたりもしたのだが、口に出せば当然引かれるだろうから、口には出さない。
ただ、
「親分子ども好きやから全然構へんよ。どんと来いやっ!」
とだけ言っておく。
それでも十分そんな事は全く障害にならないのだという事は伝わったらしく、イギリスはまたちょっと言葉に詰まって視線を泳がせた。
そして次の言葉……
「あ、そ、そうだっ!ヒゲっ!事情があってヒゲと付き合う事に…」
ピキっとこめかみに青筋が浮かんだ。
いや、この状況だから単なる理由付けの嘘なのだろうが、しかし全くの嘘とも言い切れない。
少なくともそもそも今回のきっかけは、あのクソヒゲが自分がいかにイギリスの事を熟知しているかと自慢しくさったからなのだから……。
変にちょっかいかけている可能性も皆無ではない…。
プライベートだと途端に危機管理能力という言葉が飛んでいくイギリスのことだ、変に弱みを握られて…ということもあるかもしれない。
もちろん、この子の方があのヒゲに…などという可能性など認めない。ありえない。
どちらにしてもそんなことが障害になるはずもない。
「親分の事好きや言うイギリスと無理やり付き合うなんて、あの変態外道やな。
安心し?あとで潰しとくわ。」
半分本気だ。
単なる口実なら、イギリスからそんな事にパッと名前を使われるなんて羨ましい立場なんだから殺されても文句はないだろうし(フランスが聞いたら全力で泣きながら否定しそうだが…)、もし後者のようにイギリスの弱みでも握って盾にしているなんてことだったら、中世の異端審問仕込みの拷問の末、嬲り殺しだ。
ともあれ、それも無駄だとわかったのか、言葉に詰まるイギリスに、
「じゃ、そういう事で問題ないやんな?」
と、さらに迫ると、今度は言いにくそうにうつむいてボソボソっと小声で何か言っている。
「へ?堪忍、小さくて聞こえへんかった。もうちょい大きな声で言ったって?」
と聞き返すと、イギリスは視線だけスペインに向けて、それからまたうつむいて、きゅっと目をつむったと思ったら叫んだ。
「結婚前提とかじゃないと、軽い気持ちで付き合うとか嫌だからっ!!」
うあ~うあ~うわあ~~~!!!
もうなんなん?乙女なん?!かっわかわええぇぇ~~~~!!!!!
どこの初心なお姫さんなんやっ。
ああ、どこのって、もう当然親分ちのやんな?
これはもう抱え込んで仕舞いこんで放すなって事やんな?
結婚前提?むしろウェルカムや。
「あ~、じゃあ明日指輪買いに行って籍入れよか。」
と言うのはスペインにとっては当たり前の流れである。
「はぁ?!!」
と、しかし一方で思っても見なかった反応にポカンとまるい目をさらにまんまるにするイギリスが可愛い。
「良かったなぁ。親分とこは同性婚OKなんやで~。――これで解決やんな?」
と、勢いで押せば、突発事項に弱いイギリスはわけがわかってない様子で、それでも勢いに押されてうなづいた。
やったっ!!
これはもう…取り消させるつもりは毛頭ない。
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