花畑にフラグを立てろっ!
――誘われているのか天然なのか正直もうわからない……。
夜…何故かスペインは風呂でイギリスの髪を洗ってやっている。
傍からみるだけなら硬そうな見た目に反して触れると柔らかいその髪は、持ち主であるイギリスとよく似ている。
泡立てたシャンプーをつけながら頭皮をマッサージしてやると、気持ちよさそうに細める緑の目は子猫のそれのようだ。
可愛い…確かに可愛らしいのだが、いきなり風呂に一緒に入ろうというのはいかがなものだろうか…。
普通に考えればそういう色っぽい意味のお誘いかと思うのだが、さきほどのオンセの時のこともあり、スペインは思わず
「なんで?」
と聞いてしまった。
いや、だって…男の子やし?
その気になってから、そんなつもりやなかったとかかわされたらつらいやん?
……と、思ったら本当にそんなつもりじゃなかったらしい…。
聞いて良かった…と、がっくり肩を落とす。
「だって…一人で入るより楽しいだろ…」
と、やっぱり羞恥で顔を真赤にして涙目で答えるのは大変可愛らしく、また期待が膨らんだものだが、念のため
「例えば?」
と聞いてみたら、
「……頭…洗ってもらったりとか?」
と、何故かクエスチョンマーク付きで返ってきたあたりでダメだと思った。
色っぽい方向にはどうやっても行きそうにない。
よもやそれが、イギリスが“甘える”というのを思い浮かべるのに参考にしている新大陸の子ども達の行動だというのには、さすがのスペインも気づかない。
正直、どう反応していいかわからない…。
いや、そんな事をしたらスペイン自身のとある部分が反応するであろうのをどう隠していいかわからないというのが正しいのか……。
「親分もうちょっとあとで入るさかい、イギリスの髪だけ洗ったるわ。」
これがギリギリの返しだった。
こうしてイギリスを先に風呂にいれて、身体を洗って湯船につかったら呼ばせて頭だけ洗ってやる。
ロマーノも幼い頃洗ってやっていたから、この辺りは手慣れたものだし、正直久々で楽しくなくはないが、相手が長年片思いしているイギリスだということで、湯船に使って身体全体は見えず、また、なるべく見ないようにしていても、少しつらい。
ギリギリ酷使した理性がなんとかもってくれて、風呂あがり、洗ってやった髪にドライヤーをかけるところまでやってやる。
『俺はもう君の弟じゃないんだぞっ!』
と、常日頃はスペインもその言い方には腹をたてていた、おそらく同じくイギリスに片思いをしている超大国の気持ちがちょっとだけわかる気がした。
可愛がりたい、甘えられたい、気を許されたい…そんな気持ちは当然あるのだが、先に進ませてもらえないのはなかなかつらい。
もちろん、それを言葉でイギリスにぶつけて、メタ坊やと同じ轍を踏む気はさらさらないのだが、このままでは襲いかねない。
こうなったら…強引でもなんでも、このお花畑のような脳内に絶対に折れない強固なフラグを立てるしかない!
自分の髪を楽しげに鼻歌交じりに乾かしているスペインがよもやそんな決意を固めていようとは、イギリスは当然気づくことはなかった。
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