スペイン親分の敗北
「あ…あのなっ、隣…良いか?
いや…あのっ…その………
は…離れてるのがなんとなく寂しいから……とか…」
オンセはいつも普通にダイニングで。
ここ2日は普通に差し向かいで食べていたのだが、今日は様子が違った。
いつもどおりスペインの正面の席にセッティングしたイギリスの席にチラリと視線を向けたイギリスは一瞬固まって…ぎゅっと自分のシャツの裾を掴んだ。
何か思いつめたようにぎゅうっと目をつむって、思い切ったように上げた顔は羞恥に頬が真っ赤に染まっていて、目はちょっと潤んでいる。
もうそれだけで可愛すぎてスペイン的には暴走しかけていたのだが、イギリスはそこにトドメとばかりに文頭の言葉を吐いたわけで……色々な計画が全て脳内から吹っ飛んだ。
ガタっと立ち上がり、イギリスに駆け寄るとギュウギュウと思い切り抱きしめる。
「え?ええ??ちょ、スペインっ?!!!」
「もうなんなんっ!!!」
ワタワタ慌てるイギリスも可愛すぎて、そのまま頂きますしなかった自分の理性にスペインは拍手喝采を送りたい気分だ。
あかん、あかん、あかんっ!!!
と、必死にかき集めた理性で、なんとかそのまま体制を立て直し、イギリスを自分の隣の席へと誘導するのに成功する。
しかしすぐ隣に座るのも危険なので、インターバルを置こうと、ことさらゆっくり正面の席にセッティングした食器類をイギリスが現在座る自分の隣の席へと移動させた。
こうしてなんとか持ち直してギリギリな気分で食事に集中しようとフォークに手を伸ばしたスペインの手の袖口をイギリスがツイツイと引っ張った。
「なん?」
やばい…今振り向いたら終わりだ…と、スペインはそれでも必死に返事をするが、そこでさらなる爆弾。
「…何か…怒ってるのか?」
と、心細気な声に時限装置がチクタクする幻聴が聞こえてくる。
「いや…別に怒ってへんよ?」
と、なるべく平静を装って答えるが、そこで返ってきた言葉は…
「怒っちゃやだ…ばかぁ…」
ドッカ~ン!!!と心のどこかで大爆発が起きる音がした気がする。
理性とか自制とかそんなものを粉々に吹き飛ばした…そんな感じの大爆発で……
「逆やっ!自分可愛すぎんねんっ!!!」
と、叫ぶと、スペインは可愛さの前に完全敗北した自分の完璧なはずの計画が崩れ去って行くのを感じながら、今度こそぎゅうぎゅうとイギリスの細い身体を抱きしめて、その唇を思う存分貪った。
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