ぺなるてぃ・らぶ・アナザー4章_1

スペイン親分の自制


朝…スペインは普段チュロスとショコラータくらいで済ませるのだが、朝からガッツリ食べるイギリスのために色々作ってトレイに並べる。

朝食を運ぶため…との理由付けでイギリスの寝室に入って可愛らしい寝顔を堪能するのが、スペインの朝一番の楽しみだ。

イギリス人は好きらしい…と聞いて買ってベッドに置いておいた大きめのティディベアのぬいぐるみ…。
それを子どものようにぎゅうっと抱きしめて眠るイギリスの可愛らしいこと。
23歳?この可愛らしい生き物のどこが?
もしかしてイギリスが大好きな妖精さん年齢なのだろうか…。
数百年、数千年の時を生きる妖精の年齢とすれば、23歳なんてまだまだ赤ん坊に等しいだろうし、それならわかる。

良い夢でも見ているのだろうか…。
普段はしかめられる事の多い顔がふにゃりとほころぶ。

その可愛らしすぎる顔にスペインの胸はズキンだかドキンだかひどく落ち着かない感覚を覚えた。

この落ち着かなさの原因はわかっている。
自分の欲望との戦い…それに勝てるかどうかの自信のなさだ。



『いすぱーにゃ?』

遠い昔に出会った、澄みきった大きな森色の瞳で見上げてくる幼子…。
瞬きをするたび輝く長い金色のまつ毛はまるで神秘的な森に差し込んでくる柔らかな陽光のようで、血塗られた当時のスペインの世界からは隔絶された…しかしいつか頑張って神のための戦いに勝利すればたどり着ける楽園に住む天使のようだった。

神の楽園まで…そう、この子の住む聖域までは絶対に異教徒の侵略を許してはならない…それが当時のスペインの戦いつづけるためのモチベーションだったと言っても過言ではない。

そこまで恋焦がれるというよりもう信仰と言って良いレベルで求め続けたあの子どもが今手を伸ばせば届いてしまう距離にいる。

単純な腕力となったら圧倒的に自分の方に分があって、強引に手折ってしまおうと思えばおそらく出来てしまう。
しかし短気をおこしてそれをしてしまえば最後だと思う。
千年を超える片思いからここまで慎重に慎重に進めてきた計画が水泡に化す。
安易に欲望のまま突き進まないように自制する…それが意外に大変な事を今スペインは実感していた。





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