ぺなるてぃ・らぶ・アナザー1章_1

やめておけば良かった…いや、今からでも遅くない。
あのクソヒゲ殴って終わらせるか…。

フランスに聞いたスペインの自宅前。
ジリジリと照りつける陽の日差しの暑さに、この国自体に拒まれている気がする。
イギリスは暑さの中、もうかれこれ1時間はチャイムを押すこともできず、ドアの前に立ち尽くしていた。


始まり



事の発端は二国間会議のあと、いつものようにそのままフランス宅になだれ込んで、二人でダラダラ酒を飲んだ。
そうなるとしばしば始まるのが手慰みの賭け付きカードゲーム。
大抵はお互い良い酒を賭けたり食事を奢ったりで終わるのだが、その日は違った。

「ん~、お兄さんちょっとすぐ思いつかない。
でも今日勝てる気するんだよなぁ~。
罰ゲームはあとで考えていい?」

考えこむように天井に視線を向けてそう言うフランスの、いかにも自分が勝つとばかりの言い方が気に障った。

酔っていたのもあるのだろう。

「ハッ!考える必要なんてねえよっ無駄だから。
今日は俺が勝つからなっ」
と、負けた時に何をさせられるかなど考えずにゲームを了承するなどという、迂闊な真似をしたのがそもそも間違いだったのだ。

結果…本当に負けた。

フランスも酔っていたのだろう。
罰ゲームの内容をうんうん唸りながら考えているのがまた気に障って

「もうなんでも良いから早くしろっ!!」
と、殴り倒したのも悪かったと思う。しかもさらに

「…なんでも?」
と、イテテと殴られた頭をさすりながら涙目で見上げるフランスに、
「おうっ!だからさっさと決めろっ!」
と答えてしまったから最悪だ。

「ん~じゃあねぇ…スペインに告白して、OKの返事もらってきて?」
良い事を思いついたとばかりにニヨリと言うフランスをもう一度殴る。

「他人巻き込んでんじゃねえよっ!」
「え~、だって相手スペインだし?大丈夫、絶対にOKされないから。」
で、もう一発。

「まあ…もしもう無理降参てなったら、スペインにバラしちゃってもいいよ~。
お兄さんはワインの1本でなんとかなるし、お前ら仲悪いから今更でしょ?」
で、さらに一発…。

アホらしい、で済まそうと思ったらそこで
「ま、最初から無理って言うなら良いけど。坊ちゃん口説くのとか下手そうだし」

図星だからと言ってそこで認められるかどうかは別問題だ。

「ハッ!トマトくらい華麗に落としてやるよっ!
そしたらトマトに渡すのに用意したワイン俺に寄越せよっ」
と、売り言葉に買い言葉だったわけだが……


チャイムを押そうと伸ばした手が宙をさすらう事数十回。
いや、100回くらいいっているかもしれない。
あまり暑さに強くないイギリスはいい加減太陽の国の暑さにクラクラしてきた。
もう数え切れないくらい繰り返した動作をまた繰り返しかけて、しかし膝から力が抜けた。
チャイムから遠ざかっていく視界。

「何しとるんっ!!」

妙に現実感が薄れてきたその時に、落下する身体を支えたのは、この家の家主、スペインだった。



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