オンラインゲーム殺人事件再びっ6章_6

それでもとりあえずやるべき事はやらなければならない。
香達も含めて5人で夕食を取ったあと、ギルベルトはバット3人と接触を取るのに連絡を取り合うため、リビングで全員並んでインする事にした。


お茶を配って回るフラン、PCでゲームをモニターしつつ色々調べ物をするギルベルトの横で、香が

「とりあえずさ、ティモシー、お前はエドァルドから情報引き出せっ」
「シドニーはバット3人組に接触試みろ」
と、てきぱきとティモシーとシドニーにするべき事を指示して行く。

そして自身は、
「俺はちと例のイヴと接触持ってみるから」
と宣言して画面に集中する香。

彼らにとってはゲームも本当に遊びじゃなかったんだねぇと、フランはいまさらながら実感する。

画面の中のキャラはおちゃらけた台詞はいてるのに、ディスプレイと対峙してる当人達はすごく真面目な顔だ。


しばらく全員がそれぞれの作業に没頭していたが、そろそろか…と、ギルベルトがディスプレイに視線を戻すと、ゲーム内でメッセージが来ている。

差出人は…小五郎?
覚えのない名前だが…と思いつつも、ギルベルトはメッセージを開いた。

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マリア…いや、ギルだよね?
君自身もつるんでいる連中も前回のゲームのキャラそのままのようだし…。
他人の空似ではないと仮定して話をさせてもらうよ。

一応始めまして、になるのかな。
僕的には初対面の気はしないんだけどね…
僕の方は日々兄の横で君を見ていたので、ギルは自分の友人みたいな感覚があるんだけど、君の方は当然僕を知らないだろうから自己紹介をさせてもらおう。

僕は8カ月前に亡くなった芳賀耕助の弟
ここで本名を明かしても意味もないし、とりあえず小五郎とでも呼んでもらえるとありがたい。
前回のゲームでは亡くなった兄耕助と仲良くしてくれてありがとう。
兄は君の事を唯一信頼できる友人だと言っていたし、僕もそう思っていた、いや、今でもそう思っている。
だからその友人である君をこの陰謀渦巻くゲームで見かけた時、僕の探偵としての心が君に迫る危機を忠告しろと僕をうながしたんだ。
おそらく君達参加者には知らされてなかっただろう、そしてそのまま君が平和に暮らしているのなら知る必要もなかったであろう真実を僕は知っている。
どうか驚かずに聞いて欲しい。
8か月前の殺人の驚くべき真相と、現在起こっている真実を!

8か月前のあの日…兄は真相の一部に辿り着いた。
連続殺人の犯人はイヴ。
その根拠についてはここでは割愛する。

そしてそれを知らずにそいつと行動を共にしていたアゾットというプリーストに忠告したのだが、おそらく彼はイヴに騙されていたんだろうな…。
兄を信じずイヴにそれを打ち明けたんだと思う。
結果、兄はイヴによって殺害された。

僕は念のためと託されていた、世間を騒がせている連続高校生殺人事件は三葉商事の企画した例のゲームが起因しているものだという兄の推理を記したノートを持って、兄が殺害された後三葉商事を訪ねたんだ。

そこでそれを隠蔽しようとする三葉商事の社員に囲まれてピンチだった僕を助けてくれたのは、なんとカークランド財閥の副社長のスミス氏。
三葉商事と取引があって、たまたま通りがかった彼は僕を自分の知り合いだからとかばってくれたんだ。
そして僕はその時、彼の口から飛んでもない事実を聞かされたんだ

実はあの頃カークランド財閥は三葉商事を乗っ取ろうとしていて、三葉商事の大手取引先だと言う事を利用してゲームにカークランド財閥の社長の弟を参加させ、三葉商事がスキャンダルで弱るように、殺人事件を起こさせようと画策させていたらしい。

スミス氏は自分達にはそれがわかっていても社長の暴走が止められなかった、そのために兄を死なせてしまった、申し訳ないと泣いて僕に謝罪したんだ。

結局ゲーム終了後、スミス氏達の活躍で三葉商事ののっとりというカークランド財閥の野望はいったん阻止され平和が戻ったわけなんだが、カークランドは今また今度はヴァルガス財閥の乗っ取りを画策しているらしい。

ギル…僕は君がアゾットと違い賢明な人物だと信じている。
だから兄がしたのと同じ様に、黒幕と行動を共にしているであろう君に忠告したい。
どうか僕を信じてカークランドの社長の弟から速やかに距離を取って欲しい。
君の身の安全を心より祈っている。

君の友人、小五郎より
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「え~っと…厨二病?」
隣でチラリとギルベルトのPCを覗き込んだフランが生温かい笑みを浮かべる。

「いや、探偵なりきりじゃね?」

そう言えば…こいつの兄貴もこんな感じの探偵マニアだったな…と、ギルベルトはふとその頃に思いをはせた。

多額の賞金をめぐって殺人事件が起きる中、どうみても半分趣味で犯人探しに乗り出して、結果実行犯までは割り出したモノの黒幕に殺されたという前回のゲームの被害者だが、何故かギルベルトの事は気にいっていたらしく、勝手に色々情報を流してくれていた。

今回その弟も、とんでもなく勘違いはしているようだが、有用な情報を流してくれている。

ようは…トーニョもどきを刺したバットマンかショウの恋人も小五郎のたどったような経過を経てスミス副社長に騙されたのだろう。

あとはどちらが本命かと言う事だけだ、と、ギルベルトはシドニーに

「な、シドニー、バットシリーズの正体そろそろ何か見えて来たか?」
と、声をかける。

「ん。もう頭んなか痛い決め台詞がクルクル渦巻いてるけど、一応それっぽい事は…」
シドニーはカチャカチャとキーボードを叩きながらうなづいた。

「バットマンと何か関係あるのか?」
「あ~、キャラ名とかは聞いてないんすけど、高校の時は4人組で遊んでて、そのうち一人が2年前殺されたらしいっす。で、そいつは殺される直前まで三葉商事のネットゲーやってて、今回その三葉商事のゲーム部門がヴァルガスに移って新しいネットゲーでたから、そいつを偲んで残り3人で遊んでるって事っすよ」

「お手柄だ!シドニー」
ギルベルトは嬉しそうにシドニーの側に行く。

「ども…」
褒められてシドニーもなんだか嬉しそうだ。

「頼みがあるんだが。そうだな…その2年前のネットゲーやってたリアフレが家に来てるんだが、そいつが懐かしいし少し話がしたいって言ってるんで替わっていいか?って聞いてくれ。
念のためバットマンの本名だして確認したい」

「らじゃっ。ちと待って」
とシドニーはまた画面に集中する。

「おけっ!ギル、奴らと今組んでるパーティーに誘った!」
「ダンケっ!」

即パーティに参加するギルベルト。

そうしてしばらくPCに向かい、やがて

「ほぼ特定したっ!」
と、宣言した。

「ま、若干の想像は混じるけどほぼ間違いないと思うぜ。イヴは2番目の犠牲者ショウこと秋本翔太の彼女」

「ふ~ん。バットマンじゃない事確定?」
イヴと話し中の香が言うと、ギルベルトが説明する。

「バットマンのリアフレシリーズと話してみたんだが、そこでわかった事。
バットマンは女っけなし。
ショウは年上の彼女がいたんだけどリアル高校生のイヴに舞い上がっててって構図だったらしい。
これはバットマンがリアフレに話してたんだと。
で、ここからは本人達以外はわからんから推測の域をでないんだが、ショウがイヴに会いに行くって話になった時、ショウ彼女はそれを知ったんじゃないか?
それでその後ショウが殺されれば当然犯人はイヴだって思うよな。
で、その後の流れは芳賀弟と同じく三葉商事に文句言いに行ったところに、張っていたか偶然かわかんねえけどスミスに声かけられて、そのまま騙されたパターンだな」

「んじゃ、こっちもそろそろ呼び出すかなぁ…。」
と、香は言ってカシャカシャとキーボードに指を走らせる。

どうやって?とは聞かない方が良さそうだ。

「おっけぃ。明日昼過ぎ吉祥寺。で?説得は誰がやる?」
「…どうやって呼び出してる?」
「ん~、早川梓名乗って?」
「誰だそれ?」
「殺されたアゾットこと早川和樹の実姉。同じ立場だから~とか言ったらコロっと」

やっぱりそういう方向か…と、ギルベルトは肩を落とした。
相手はそれでなくてもこちら側を疑っている。
さらに騙して呼び出している時点でかなり説得はきつい。

なんだか気は進まないが…仕方ない。

「俺が行く。例のアレ使うわ」
と、それだけで香には伝わったらしい。

「じゃ、明日朝くらいに会いに行くん?」
「あっちの都合がつけばな」

と、二人だけしか通じない会話が交わされるが、シドニーとティモシーはいつもの事と気にせず流し、フランは触らぬなんちゃらに…と言うのをいい加減学んで口をつぐんだ。

「とりあえず…わかってるとは思うがトーニョには…」
「うん、内緒な」



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