そして買い物&夕食の準備。
その間香とギルベルトはバイトから戻ったシドニーとティモシーと共に夜の作戦を練る。
そこで遅まきながら降りてきたアントーニョは食事を作るフランのいるキッチンに顔を出す。
「おはよう。随分よく寝てたね?アリスは?」
コトコトとスープを煮込んでいる鍋をオタマでクルクルかき回しながら言うフランに、アントーニョは、ん~、と眉を寄せた。
「あーちゃん熱出してん。
ちょっと色々ありすぎたしなぁ。あの子メンタルが全部身体に出るさかい…」
「あらら、じゃ、病院連れてかないでいいの?」
火をカチっと止めて振り向くフランに、アントーニョは少し眉を寄せてため息をつく。
「ん~…微妙やなぁ…。今あんま外に出すの危険かもしれへんし。
とりあえず家にある解熱剤飲ませて様子見しよ思て。
せやからフラン、なんか消化に良さそうなモン作ったって?
あとなんか喉の通りの良い感じの甘いモンも」
アントーニョはそれだけ言ってキッチンを出ると、ちょいちょいとギルベルトに手招きをする。
「あ~、聞いてた。夜はこっちは俺と香でやるから付いててやっていいぞ」
と言いつつギルベルトは立ち上がってアントーニョの方まで寄ってきた。
「微熱よりちょぃ高い程度なんやけどな…」
と、アントーニョは少し眉尻を下げると、ギルベルトにだけ聞こえるくらいに少し声のトーンを落とした。
「とりあえず…少し落ち着いてはきたけど、あーちゃんやっぱり参ってるさかい、今色々ごちゃごちゃしたないんや。
せやから信頼してへんとか言うんやないけど、香達にホンマの事言うのはもうちょい待ったって?
ギルちゃんは隠したなかったんやけど、俺の一存でって事でええし、俺があとで頭さげるから」
あ~、そっちか…と、ギルベルトは苦笑した。
「確かに…影武者だけならとにかく、お前らが悪ノリして女キャラにしちまったしな」
というと、アントーニョは
「こないな事になるとは思ってへんかってんもん。しゃあないやん」
と決まり悪そうに口をとがらせる。
「ま、これに懲りたら悪ふざけもそこそこにしとけよ」
とさらに言うと、アントーニョは
「どっちにしても、これからは軽々しい行動とれへんようになるわ」
と肩をすくめた。
その言葉にギルベルトは一瞬放心した。
軽々しい行動を取らないアントーニョ…なんだそれ?
思わずそれを口にすると、てっきりパンチか蹴りくらいは飛んでくるかと思ったが、アントーニョはただ小さく笑った。
「馬鹿はやるで?でも他におかしな影響出るような事はもうやらへん。
俺の行動で返ってくるんは、もう俺にだけやないし…。
なんでもありありな子ども時代はあれでもうしまいや」
それだけ言うとアントーニョはフランが用意した飲み物だけ持って2階へと戻って行った。
残されたギルベルトはやっぱりしばらくその場で放心する。
もう不思議とかそういうのを通り越して現実感が全くない。
一体ローマ老に連れられて行った先で何があったんだろうか?と勘繰ってみたくなる。
あのアーサーに出会った去年の夏の事件からまだ8カ月ほど。
その間に一気に小学生レベルから落ちついた大人にまで駆け上がったようなアントーニョを前に、ギルベルトは急に自分が意外に将来的な部分に関して考えていないのでは…と、少し焦りを感じ始めた。
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