オンラインゲーム殺人事件再びっ6章_4

結局アーサー以外その晩は全員徹夜という状況だったが、香達3人は当たり前にバイトに出かけ、フランはその3人に朝食をふるまったあと、夜に備えて眠りについた。

ギルベルトは昼まで軽く仮眠を取ったあと、さきほどのアントーニョの言った事について考えて見る。

普通に遠まわしにアントーニョが去年の殺人にアントーニョが関わっているというデマを流したところで刑事事件にはならないだろう。
単なる噂を聞いた…程度で終わる。

となると…出来るとしたら社会的制裁か…。

(さすがに報道関係の知り合いはいねえなぁ…)
ギルベルトは考え込む。

なにか副社長が直接確信に触れる現場に報道関係者がいてそれを流してくれればいいのだが、見知らぬ一般人から寄せられるデマの確率も高い情報に報道関係者がのってくれる可能性は低いだろう。

バットマンの恋人であろうとショウの恋人であろうと、情報をよく考えずに鵜呑みにして自分達に危害を加えようとしてきた相手なのだ。
正直…ギルベルト自身はアントーニョのように相手に同情する気にはなれない。
この手の愚かさはそれだけで罪だとさえ思う。

ただそれとは別に、副社長は確かに排除しておきたい。
何かないか…。

ギルベルトはフランが朝作っておいてくれた昼食用のサンドイッチをかじりながらPCを前に考え込んでいたが、そこでドアのチャイムが鳴ったので慌ててインターホンにかけよった。

『賢者様あ~け~て~♪』

と、門の前で香が手を振っているので、門とドアのロックを解除してやるとやがてリビングに香が入ってくる。

「なんだ、仕事じゃなかったのか?」
とギルベルトがノートPCを前に顔をあげると、香はにやりと笑った。

「仕事だけど?跡取り様のご要望に沿うのが一番のね」
と言うと、ピッとギルベルトのPCUSBを差し込む。

「なんだ?」 
と、ギルベルトが中をみるためフォルダを開くと、中に入っていたのは物件情報。
チラリと隣に座る香にギルベルトが目で問いかけると、香はにぱっと

「えっとね、副社長の個人で持ってる物件情報。
賢者様的には社会的制裁の方向で進めてくんでしょ?
そしたら副社長が何か企むとしたらこのあたりの物件のどれかでかなぁ…と」

「お前なぁ…」
ギルベルトは香の察しの良さと無謀さ、両方にため息をついた。

「とりあえずバットマンとショウ、どっちの恋人がビンゴかわかんないけど、恋人の身元割れたら今度はこっちからこっそり焚き付けて特攻させて、それをおおやけに流してドカ~ン!て考えてんじゃないの?」

派手に行こうぜ!と言いつつニシシっと笑う香に、ギルベルトは腹を決めた。

「それやるつもりだったんだけど、問題は二つあってな…」
「一つはトーニョだよな?恋人も一緒に自爆させるのは多分反対される。
で、もうひとつは?」

当たり前に自分の考えを読まれている事に内心驚くギルベルト。
こいつが敵じゃなくて本当に良かったと思う。
まあ味方にいれば心強い、と、ギルベルトはもう一つの問題点を素直に口にした。

「おおやけにする手段がねえ。さすがに報道関係の知り合いはいねえし」

「あ~そんなこと」
と、香はそれをあっさり流した。

「あてあるのか?」

一応今回の勝負に勝つまでは本当に普通の孤児院出身の一般人のはずだが…と思いつつ聞くと、香はこれにもあっさり

「当然!」
と答える。


「お前…一般人じゃねえのか?」
と、ギルベルトが目を丸くすると

「一般人だよ?ただしね…」
と香はにやりと笑う。

「イルヴィスのベストオブアタッカーだからねっ」
「だから?」
俺の言う事なら新人Xあたりが信じて動くんじゃね?」

あ~!それかぁ!と、ギルベルトは目から鱗な気分だ。


「何も副社長がうんぬんなんて話しないでもいいじゃん。
跡取り様知ってるから会わせてやるよ~って事でっ。
そしたらやめろっつってもビデオか録音機器くらいは持って張り切って飛んでくるっしょ。
しかも一応さ、新人とはいえ有名人だからね、奴も。
消えたら大騒ぎになるから下手に手出しもできないだろうし。
自社の社員がそんなん見聞きしたとか言ったらローマ爺だって動く大義名分できるしな。
あとは爺達にやらせておけばいいんじゃね?」

「…お前…一応罪おかしてる犯人だけじゃなくて、一般人のXまで利用する気かよ。
俺以上にあざといな」

まあ考え付かなかっただけで考え付いてたら自分もやろうとするだろうが…と思いつつギルベルトが言うと、香は

知性派反逆児って呼んでやって」

とウィンクしてみせた。




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