「まずわかってる事だけザ~っと話すぞ」
香の要請を受けてギルベルトは頭の中で整理をしながら、同時進行で口にする。
「へ?」
目を丸くするフランに視線だけで黙って聞けと送ると、ギルベルトは続けた。
「一応大財閥のボスで後見人のヴァルガス会長が仕切っている勝負だ。不正や行きすぎた行為がないかを見張らせるくらいの事はしているのは、副社長だって想定の範囲だろう。
だから自分と全く無関係な手ゴマを操って、“跡取り”を亡きものにしようとしたんだ」
「その手ゴマの身元のめどついてたりするん?あと、その根拠は?」
フランと違って驚いた様子は見せず、ただ探るように香が聞いてくるのに、ギルベルトは少し考えをまとめるように沈黙したあと、
「まあ…物的証拠はないだけどな…」
と、あごに手をやった。
「とりあえず…相手は間違って刺しているってことは、トーニョの顔を直接は知らないんだよな。
でもトーニョの存在は知っていて…跡取りっていうのがゲーム巧いからとかいう根拠のない理由からじゃなく、トーニョがある程度普通の人間じゃないって事も察する事のできる人間。
まあもっとはっきり言ってしまえば、俺ら、去年の夏の高校生連続殺人事件を解決して生き残った当事者なんだが、それを知ってる人間の可能性が高い。
で、確証といえるかは微妙だが、今回のゲーム上で実はその時の参加者が使っていたキャラに容姿も性格もそっくりなキャラ使ってる奴がいるんだ。
そのゲームは参加者として選ばれた12名以外にはクローズドになってたから、基本的にそのキャラはそのゲームの関係者しか知らねえはずだし、使われてたキャラの一人はすでに殺されてて、そのキャラに似せたキャラが3人。
この前お前とトーニョがオスカーのとこに拉致られてた時にアリスが見たっていうゴッド3人組な。
もう一人はイヴっていう女のウォーリア。その連続殺人の犯人のキャラ。
トーニョを消す事だけが目的ならわざわざそんな警戒されるようなキャラ使う事は解せないんだけどな、かといって他人のそら似にしては名前だけじゃなくて外見から行動から似すぎてるんだ。
ちなみに…イヴってのは途中で中身変わってるっていうか、二人目が殺された辺りで参謀がついて行動が変わってるんだが、行動変わる前になんだ、似てるの。
変わった後の方が期間的には長いし印象も強いだろうから、運営関係者が演じるとしたら変わった後の方が自然だと思うんだよな…。
ってことは…それを使ってるのは二人目が殺されたあたりでゲームを見る事をやめたやつ…。
しかも…何故か公表されてないのに犯人がイヴのキャラを使ってたのを知ってた奴。
そう考えると可能性も限られてくると思う」
「すごいな。さすが賢者様。
で?賢者様の見たてとしては犯人は?」
そう言う口調で拍手して、ちゃかしているように見える香だが、目は笑ってない。
そんな香をよそにギルベルトは淡々と続ける
「以上から可能性として考えられるのは第一の殺人の被害者のバッドマンことアルフレッドと第二の殺人の被害者のショウこと秋本翔太、それからそれとほぼ日を同じくして殺された第三の被害者のメグこと赤坂めぐみの関係者だな。
動機は…もう思いっきり想像の範囲を出ないんだが、もし2年前の事件で被害者の殺害理由として何らかのデマを吹き込まれたんじゃないかと…」
本当に淡々というギルベルト。
「例えば?真犯人は実はトーニョだとか?」
と香。
「もしくはそそのかしたとか…あるいは…知っていて見殺しにしたとか、か?」
香の意見に、ギルベルトは、ま、そんなとこだな、とうなづいた。
「まあ、誤解してる理由はどうせ捏造だし何だっていいんだけどな」
と、とりあえずそちらは切り上げて、ギルベルトは言う。
「問題は…犯人がその中のどいつかという事だ」
「ま、そりゃそうなんだけど?ギルベルト賢者様のご意見は?」
と、また茶化す香に、賢者はいい加減やめろと気まずそうに言うギルベルト。
それでもいいじゃんいいじゃんと笑う香に、諦めのため息をつきつつ話を進める。
「親父の話によると、トーニョもどき刺したのは目撃者によると女だったらしい。
で、ショウとメグが殺された日を境にイヴの行動は参謀がついて変わってるから、今のイヴはショウやメグが殺された日を境にゲームを目にする機会を失った者、つまり殺されたバットマン、ショウ、メグの関係者ってことになる。
で、もしそれがそいつらの遺族だとしたら、行動を起こす気があるならその後もゲーム見てると思うんだよな。
ところが参謀色の濃いイヴを知らないって事は、参加者当人が殺されて参加しなくなった時点で見られなくなった人物、でも、そいつのために犯罪者になっても良いくらい相手に執着してた人物って事になる。
家族以外でそこまで思い入れを持てる相手って通常誰だ?」
「恋人…かな。親友って可能性もなくはないけど…人生変えるまでは行くかなぁ」
香が即答してギルベルトが続けた。
「ん。俺を刺そうとした奴は女って事だから、ここでリアル女のメグは省いて、可能性が高いのはショウとバットマンの恋人あたりかと。まあ…想像の域でないんだが…」
どう探ればいいのかもまだわからない、と、ギルベルトが正直なところを打ち明けると、香は
「あ~、それなら任せてっ!俺らそういうの得意だからさっ。
今晩でもバット3人組に探りいれてみるわ。話すきっかけはそっちの方がつかみやすそうだし」
と、請け負った。
0 件のコメント :
コメントを投稿