オンラインゲーム殺人事件再びっ4章_8

そんなやりとりをしつつ4人リビングで待ってるとチャイムの音がする。

出ようとするアーサーを制してアントーニョは先にインターホンの所のカメラでカオル達だと確認すると

「今出るわ」
と、言ってドアを開けに行った。

そしてアントーニョの後に続いてカオル達3人もリビングに入ってくる。

「まいどっ」
と入ってくる3人はさすがに前に会った時のテンションでふざけてたりはしないけど、なんだかちょっと嬉しそうにも見えた。

「いらっしゃい」
アーサーがキッチンからお茶のワゴンをおしてくる。

そしてティーポットからトポトポ紅茶を注ぐと、テーブルに並べ、戸口に立ったままの3人にどうぞ、とソファをすすめた。

「その前にさ…確認なんだけど、トーニョ」
カオルがその場に立ったまま、ソファに座ってるアントーニョに視線を落とした。

「なん?」
アントーニョは入れたての紅茶を口に含んで逆にカオルを見上げる。

「他の3人は絶対的に信用出来る?」

な……

思わぬカオルの言葉にさすがにムッとして口を開きかけるフランを手で軽く制して、アントーニョは

「みんな子供の頃からの幼馴染やねん」

と言うが、カオルはさらに

「その後…気が変わる可能性ないとは言えなくない?」
と続けた。

その言葉にアントーニョは少し考え込む。


「もちろん世の中に絶対100%なんて事はあらへんけどな。
まあこのあたりに裏切られて殺されるんなら、それは俺がそこまでの男やって事やし、しかたない思うわ。
それに巻き込まれるのが嫌ならお前の方が帰り?
今俺はお前を信用しとるし最後まで信じる。
それは変わらへんけど、お前の希望を全部かなえると言うのとはまた別や」

カオルはというとしばらくぽか~んとしてたが、その後苦笑。

「悪いね、こっちも人生かけてるからちょっと慎重になりすぎてて。
トーニョがそこまで言うなら信じるっつ~かなっ」

とソファに座って、いただきま~す♪と紅茶のカップを手に取った。
いつものカオルだ。


「ま、ちと言い過ぎちゃったお詫びもかねて、こっちからこっちの状況と正体さらすね」
言って、シドニーとティモシーもソファに促す。

そして二人がカオルに並んでソファに腰を下ろすと、説明を始めた。


「結論から言うと俺ら跡取り様の側近候補なのよ」

はあ?思わぬ告白にフランは呆け、ギルベルトは眉をしかめる。
そしてアントーニョはアーサーを引き寄せて足の間に座らせると

「それで?」
と先を促した。

カオルはそれにうなづいて先を続ける。



「俺らがさ、生まれた頃って今の社長様の爺さんに当たる人が社長やっててさ、ちょうどその跡取りの息子夫婦が二人の息子残して亡くなったんだ。
で、会社は代々世襲制だったから当然そのお孫様が将来会社継ぐ事になるんだけどさ、間1世代抜かす事になるわけだから、当然かなり若い社長様になるわけじゃん?
で、当時から副社長やってる爺さんも優秀なんだけど結構野心家な人で…まあ早い話が若すぎる社長様が傀儡になったり乗っ取られたりってのを警戒したんだな。
かといって自分が画策すれば社内に亀裂が入りかねない。
だから当時の社長様は、いつかお孫様が社長になる日のために、跡取り様だけのために動く側近を作ってそのフォローに当たらせようって考えたわけ。それが俺達。
もちろん他に気付かれたら終わるから、親友だった大手取引先のローマ爺…つまりこのゲームの開催者に、こっそり依頼してさ。
俺らについて言うと、孤児院一緒だったってのはホントで…小学校入った頃かな、ローマ爺の使いってのがきて慰安と称して色々体動かしたり頭使ったりする遊びをやらせていったんだ。
で、後日な、俺にその使いから実は先日のは遊びに見せたテストで俺が総合的に1位だったから、とある会社の社長様の側近候補として教育をうけさせたいって申し出があったわけ。
んでもってあと2名信頼できる人間を二人選んでいいって言われたからシドニーとティモシー選んでさ。
で、その時言われたのが、俺らはあくまで側近”候補”であって、確定じゃないってこと。
跡取り様に必要とされないならお払い箱。
最終的に選ぶのは跡取り様だって言われてる。」
そこでカオルはチラリとアントーニョに視線をむけた。

「俺らにはさ、跡取り様がどんな奴でどこにいるとかも聞かされてなくて…俺らはまずどこかにいるはずの跡取り様を捜す事から始めなきゃならなかったんだ。
全くなんにもないところからってのはさすがに無理だから、跡取り様に今回のゲームやらせるからって話は聞いてて…俺達は普段は3人それぞれ分かれてめぼしい人間にチェックいれて、最終的に絞り込むって感じで跡取り様を捜してた。
で、俺が辿り着いたのがトーニョで、ティモシーが辿り着いたのがエドァルド
まあどっちかだろうなって事でそれぞれがそれぞれに張り付いてシドニーが遊撃みたいな感じでさ、動いてた」

「あ~、事情はわかってんけどな、なんで今なん?
もうお孫様が会社継いどるやん?ていうか、その理屈から言うと、自分らは今の社長についとらんとあかんのやないか?」

「なんで今かっていうと…だ…。」
そこでカオルは初めて少し悩んで、シドニーとティモシーを窺った。

「しかたねえんじゃね?それ言わねえと先進まねえし」
と、シドニーが言うのにティモシーもうなづく。

「なん?言いにくい事なん?」
「うん…まあ…こんな時期にショック与えたくないっつ~か…」
「ええよ。なんでも言ったって。言わな進まんのやろ?」
と、アントーニョがうながすと、カオルは覚悟を決めて口を開いた。

「あのな、今の社長様は若いっつっても爺さんから会社引き継いだのは会社に入って修行がてら5年ほど下積み積んだ27ん時じゃん。
だから重鎮達と揉めはしたもののつぶされるほどでもなくて、むしろ俺ら当時まだ14歳のお子さんだったからさ、いてもしょうがなかったわけ。
で、まあそれから今まで3年間はなんとな~く流れてきたわけなんだけどさ、去年の年末の健康診断でさ、社長様に病気みつかったんよ。
まあ…なんつ~か…言いにくいんだけど…手術の成功率5割?
成功してもハードな仕事無理って事で……社長職をまだ高校生のトーニョに引き継がせないとってことになったから、ローマ爺が俺達を……っ?!」

ガチャン!とカップがアーサーの手から滑り落ちて砕け散った音でカオルは話をいったん止めてそちらを見る。

「姫様…顔色悪いけど大丈夫?」
と、声をかけるが、血の気の失せたアーサーからは返答がない。

「あ~ちゃん、貧血かもしれへんな。
悪い、あとはギルちゃんに話したって。あとでギルちゃんから聞くさかい」
と、アントーニョは他に何も言わせる暇を与えず、アーサーを抱えあげて私室のある2階へと消えていく。







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