結局…特にこれと言った話もないまま翌日…。
「ギルちゃん、今日はお昼要らないんだよね?」
食後のお茶をいれながら言うフランにうなづくギルベルト。
帰り合流できるなら合流してお買い物しようよ」
画策してるらしい…というのはわかるが、それは説得なのか?とアーサーは少し首をかしげるが、そこで
「あ~、ええなぁ。たまにはみんなで買い物するか~」
と、アントーニョがノッテくるあたりを見ると、どうやら二人の間での合意はできているらしい。
ギルベルトはそんな二人に何か感じるところがあったのか、新聞を読みながら
「新宿。だけど付いて来るのは駄目だぞ。帰りに合流はいいけど…」
とだけ答える。
お見通しか?
「えっと…じゃあ帰りねっ。」
返事を聞かずにフランはタタ~っと使用後の食器を片付けにキッチンに走って行く。
ギルベルトはため息一つ。
キッチンに戻るフランを見送ると、アントーニョに
「お前らが何考えてんのかわかんねえけど、アーサーを巻き込むような真似だけはすんなよ」
と念を押した。
その後、部屋に戻ると何故かフランが待ち構えていて、ベッドの上に見慣れない服が…。
「なんだこれ?」
とフランに聞くと、後ろでパタンとドアを閉めたアントーニョが
「変装に決まっとるやん♪」
と、退路をふさいだ。
「ちょ、なんだよっ!」
と、戸惑うアーサーに構わず、アントーニョは
「ちょおフラン着替えるまでは部屋出ててや。」
と、ピシっとドアを指差す。
お兄さんが服用意したのになぁ…とぶつぶつ文句を言いながらもフランが部屋を出ていくと、
「さ、着替えようか~」
と、アントーニョは上機嫌でアーサーの服をひっぺがした。
「うっわぁぁ~。かっわいい!!やっぱお兄さんの見たてだけあるよねっ!!」
着替えが終わって部屋に戻ってきたフランの第一声。
白いノースリーブの上にゆったりとしたクリーム色のドルマンニットのざっくり編みチュニックワンピースを着て、下には八分丈の細身のジーンズ。
「仕上げはお兄さんに任せて♪」
と、フランはいそいそとポーチを取りだした。
「ちょ、化粧はっ……」
「大丈夫っ!ナチュラルメークだからっ」
と、強引に軽くファンデーションを塗って、
「目もこのままで十分大きいしまつ毛もクルンて長いからアイメークは要らなさそうだね~。あとはこれかなっ」
と、薄くリップクリームだけ塗った。
「じゃ、これは没収な~」
と、そこですかさずアントーニョの手が伸びてきて、使ったリップとリップブラシを取り上げる。
「ええ?なにそれ?」
「当たり前やん。あ~ちゃんの唇に触れたモンをフランなんかに持たせとって変な事に使われたら嫌やし」
「変な事って何?!変な事って!!」
などと言う会話を交わしながらも、フランの手は器用にムースを使ってアーサーの髪をふわふわに整えていく。
「じゃ~ん!これでどうよっ!」
と、最終的に大きめの伊達眼鏡をかけて、自慢げに手を広げる。
「うっわぁぁ~~!!!いつも可愛えけど、今日も可愛え~~!!
俺も着替えよ~。フラン、ギルちゃん頼んだわ~」
と、歓声を上げつつ、アントーニョは不満の声を上げるフランを部屋から追い立てる。
「トーニョ…これって……」
アーサーが恨めしげにチュニックの裾を握りしめて上目遣いに睨むと、アントーニョは
「ええやん、一応パンツスタイルやし。かわええよ。」
と、ヘラ~っとした笑みを浮かべた。
「これやったら黙っとったら女の子かな?思うし、バレへんやん」
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