オンラインゲーム殺人事件再びっ2章_7

カオル奴隷に昇格?


「そろそろ…先の事考えておかないとな…」
フランの作った美味しい夕食を食べた後、ギルベルトが唐突につぶやいた。

「先って…めっちゃ考えてない?ギルちゃん。いきなり良い大学目指しちゃってさ」
ギルベルトの言葉にフランが言うと、ギルベルトは苦笑する。

「いや、そっちじゃなくて…ゲーム内の事。
前回と違って大勢がプレイする事前提に作ってるからミッションも少人数じゃできないもの多いだろ。
3までは4人でクリアできたが、そろそろフルパーティじゃないとつらくなってくるから。
攻略法みつけるのにある程度実験繰り返す事になるし、できれば野良じゃなくてあと二人くらい固定が欲しいかなと。」

「あ~そっちか~」

ギルベルトは3人がストーカーパニックに陥っている間も、ひたすら坦々とミッション攻略法を探っていたらしい。
遊び一つとっても本当に無駄な動きをしない男だ。


「カオルとか…だめなのか?」

最近ほぼ毎日一緒にいるしカオルがいるとトーニョと二人漫才コンビの様で楽しいと、アーサーが言うと、ギルベルトは小さく首を横に振った。

「あいつはあいつで仲間いるだろ。
今はたまたまベンの事で一緒だけど、やっぱり元の仲間差し置いて引き抜きは良くない。
こっちは断ってくれてもいいけど、あいつはそれで多少なりとも気まずい思いするだろうし、こっち入ったらあいつのそれまでの人間関係に悪影響及ぼさんとも限らないから」

なるほど。
ベンはとにかくとしてシドニーとティモシーとはまだ仲いいわけだし、と、言われて初めて気付くアーサー。

少しがっかりと肩を落とすと、そこでアントーニョが口を開いた。


「じゃ、シドニーとティモシーごと誘えばええやん?
ミッションは2回やるって事で問題ないやろ」

「あ…そか。そうだよな。そうするか…」

その可能性を考えていなかった、と、同意するギルベルトにアントーニョは

「ということで…連絡取りやすくなるし3人ギルドに誘ってええな?」
と、たたみかけ、全員の了承を求めた。

もちろん気が良く楽しいカオル達をギルドに引っ張る事に反対する者などなく、全員一致で勧誘する方向に決まった。



その夜、勧誘の相談もあるので、珍しく各自部屋には帰らず、リビングで並んでログイン。

「んで?誰が誘うよ?トーニョか?」
ゲームを立ちあげながらギルが聞く。

「え~、やっぱりアーサーじゃない?
お兄さんだったら断然女の子のお誘いの方がいいわ~」

「うざいわっ、変態」

「え~、じゃあトーニョだったらギルちゃんとかの誘いがいいわけ?」
「俺やったらあーちゃんがええに決まっとるやん!てかギルちゃんから誘いってありえんわっ」
「ひでえ!」

3人グダグダやっている間にちゃっちゃとインしたアーサーがアリスでカオルにパーティの誘いを送ると、即入るカオル。

『まいどっ!(^o^)ノ』
と挨拶を返す。

『あの…カオルさん、お願いがあるんですけど…』

『はいはい、なんざんしょ?俺個人の範囲の事ならなんでもどうぞ。
姫様のお願いなら喜んで♪』

と、そこで気付いたアントーニョがアーサーのPCのキーボードを打つ。

『男に二言はありませんね?』
『もっちろん♪』

『じゃ、嘘付いたら針千本飲ましちゃいますね(^-^』
『ま…まじすかっ』

「お前…」
と、ため息をつくアーサー。

「ええやん、こんくらい言ったれや」
と言うアントーニョからまたPCを奪い返すアーサー。

『んで?いったい何を?』
カオルが本題をうながすと、続ける。

『えっとカオルさん私達のギルドに入って一緒にミッションとかやって下さらないかと。シドニーさんやティモシーさんも』

アーサーの言葉に一瞬カオルは沈黙。
そして続ける。

『あ~俺に関しては喜んでっ。
でもシドニーやティモシーはそれぞれ普段は別行動して最終的に情報を共有したいねって感じのスタンスでやってるんで。
まっ、あいつら二人はそういうわけでギルドは無理だけど、姫様が一言声かければいつでも召喚されて何でもお手伝いはするんでっ。って事でおっけぃ?』

『はい。じゃ、みんなにもそう伝えますね』
『らじゃっ(^o^)>』

そしてカオルにギルドクリスタル渡しがてら集まる面々。

ギルドクリスタルを装備してカオルは開口一番

『まいどっ!このたびめでたく姫様の従者から姫様の奴隷にランクアップしたカオルでっす♪よろしくっ(^o^)>』

当然それにも
『それって…格上げなん?』
と、トーニョの突っ込みが入る訳で…。

なんだか新人というより古参のメンバーみたいだ。

それに対してもまたカオルは、
『シクシク…せめて格上げと思わないと…。
俺姫様の命令聞かないと針千本飲むって約束しちゃったよ(;_;)』
と涙を拭く動作。

『安心し。その点については俺もギルちゃんも仲間やで』
『うっあ~。嬉しくない仲間っ!』

なんだか…放っておくと延々と続きそうな二人の馬鹿話。

まあずっとそうやってても仕方ないので、フランが
『んで?今日はどうするん?』
と促してみた。

『あ…私は今日は先約で…』
まず手を挙げるアリス。

『先約って?アリス、カオル達以外と野良でパーティなんか組んだ事ないよね?
他フレとかいるの?』

フランが他に先んじて聞くと、アリスはニッコリ

『えと…釣りしてたら隣の方がたまたま私達のパーティでご一緒した事あるらしい方だったり、移動中に道で死んでらした方を蘇生したら”不思議な縁ですね、ぜひフレカ交換を”って申し出て頂いたり、街中でアクセサリとか見てたら”間違って買ってしまったのでよければ受け取って下さい”って親切な方とかいらしてそのままフレカ交換申し込まれたりとか…そういう方々ってパーティ中とかでもたまたま近くにいらしたりとかよくあるんです

「なんかな、ゲーム内だとすごく友達がたくさんできるんだ」
と、リアルでもにこにこ言うアーサー。


………突っ込みたい……それってたまたまじゃない……

と全員が思ってたらカオルが突っ込んだ。



『姫様…それ絶対たまたまじゃないから。マジ違うから…(;_;)』

『え?だって本当に偶然ですよ。
お約束とかぜんっぜんしてないのに何故か一緒になるんです』

いったいベンの時のみんなの努力って…と、トーニョはがっくりとその場に膝をついている。


『これは…きりない…よね。
俺らが知らないだけでベンもどき増殖中だったんだね…』
フランが苦笑した。

『んで?今日のお約束は誰と何を?』

呆然とする男性陣をとりあえずおいておいて、ギルがマリアで聞くと、アリスは

『えっと…確か一度私達のパーティに入っていらした事がある方らしくて、それからあちこちで偶然よくお会いして、良ければフレカ交換をって申し込まれた方です。
不思議な森っていうキノコが可愛いエリアがあるそうなんです。
そこでキノコに座ってまったりおしゃべりしませんかって』


まあ…実はファンタジーや可愛いモノが大好きなアーサーが好きそうな感じの場所ではある。

…が、ベン2号決定だ

というか…もう誰も突っ込む気もおきない。


『姫様っ(>_<)ノ』
『はい?』
『俺もキノコ大好きっす!一緒に行きたいっす!(>_<)ノ』
『そうなんですか~。じゃあご一緒しましょう。
おしゃべりは大勢の方が楽しいですしね』

カオルの言葉に微塵も疑問を感じてないアリス。


「カオルのキャラってチビで可愛いから、きっとキノコ椅子も似合うよなっ♪
きっと森の妖精さんみたいだろうなっ。」
と、リアルでアーサーは3人にニコニコ話しかける。

『じゃ、お兄さんも行っちゃおうかなぁ~』
とフランがカオルの援護を申し出た。

『お~いいねぇ♪どうせなら全員で行っちゃおうぜぃ♪
大勢の方が楽しいしねっ(^o^)b』

そこでカオルのだめ押し……

もちろん、アーサーは相手の思惑もカオルの思惑も全く気付く事なく

『そうですよねぇ。みんなで行った方が楽しいですよねぇ』

と、ギルドメンバー全員を引き連れて、甘い期待をしていたであろうベンもどきの野望(?)を粉々に打ち砕いたのであった。


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