オンラインゲーム殺人事件再びっ2章_4

ナイト様注意報


「な、あーちゃん、昨日のパーティってどんな感じの立ち回りやった?」

どうやら昨日のメンバーからティモシーを除いて代わりにアントーニョを入れた6人でパーティーをするらしい事をフランから聞いたアントーニョは、リアルで隣でプレイしているアーサーに聞く。


二人はアーサーの私室の大きなベッドに並んで座り、ベッドラックの上にPCを並べてプレイしていた。

部屋には勉強机と椅子は当然一つしかないし、ゲームをする時はたいていこの体制だ。


「ん~変わった立ち回りだったぞ」

と、アーサーが昨日のパーティーの立ち回りを話して聞かせると、アントーニョは

「なるほどなぁ。魂胆読めたわ。おおきにな、あーちゃん」
と、不思議そうな顔をするアーサーににやりと笑って見せた。



まあ二人がそんな会話を交わしてる間に、全員準備が整ったらしい。
噴水の所に集合でもうパーティ作り始めてる。

フランの誘いを受けてパーティに入ると、もうメンバーは揃っていた。


『んじゃ、そう言う事でっ。
こちらは俺のギルドのトーニョ。
で、こっちは昨日一緒だったカオルとシドニーとベンね』

二人がパーティに入った所でフランがそう紹介すると、カオルはピョンっ!とトーニョの方に一歩飛び跳ねてシュタっと手をあげた。


ち~っす!
ヒーラーの敵対心ビシバシアップさせる天才っ、特攻ウィザードのカオルっす!
空気読めんけどイルヴィス1の鉄壁さを誇る盾ベルのトーニョ、お噂はかねがね伺ってまっす。
よろしく~(^o^)/~』

いきなり飛ばすカオル。


『おいフラン…自分どういう噂してたん?』

と詰め寄るトーニョにフランが答える間もなく

『そういう噂っ!(^o^)』
と、断言するカオル。


それに
『今日もすごいテンションだねぇ(^^;』
と、フランが苦笑する。

『本気でしょっぱなから全開野郎なんだけど、紙薄だからねっ。
守ってあげたくなるっしょっ?(^-^』

なるかぃっ!

『ひっど~い、トーニョ冷たいっす(;_;)』
なんだかその後もそんなどつき漫才みたいなノリでトーニョも馴染んでる。




そんなこんなで毎度おなじみ山の中腹。
毎度おなじみの巨人一名様ご案内~。

ひゃっほぅ~♪

雄叫びを上げていきなりファイアを唱え始めるカオル。


トーニョがそれを察知して一歩前に出て巨人を攻撃した。
まず一撃。
タゲがトーニョに。

直後にカオルの炎系魔法ファイアが着弾、後ろに行きかける巨人。

だが振り向き様トーニョがもう一撃。
タゲが戻った。

『やるねぇ~♪んじゃもう一発いっとくっす♪』
そしてまた詠唱を始めるカオル。

ざ~け~ん~な~やぁ~~!!死にたいん?!自分っ!!』
叫ぶトーニョ。

一発でも多くの魔法撃って一撃死っ
これがウィザードの心意気っしょ!』

ハイテンションでファイアをさらにぶちかますカオル。


一瞬動きかけるタゲ、でも一瞬でまたトーニョがタゲを取り戻す。

いつもよりは若干被ダメが大きいトーニョのHPをまったり回復するアリス。
でももちろんタゲは動かない。


『これで撃てるの最後かねっ♪』

カオルのファイア3発目。
タゲは全く動かない。

そして4発目の詠唱前に沈む敵。


『すごい…戦闘だねぇ』
シドニーがまず感心したように言う。

『しょっぱなから本当に全開するってありえへんわ…』
とさすがにため息のトーニョ。

『いやいや、トーニョの方が充分あり得んから大丈夫っ!(^o^)b』
悪びれないカオルに

『何がや…』
とまたトーニョのため息。


『これだけ思い切り全開しててタゲこないってマジありえんって♪
姫様に聞いた時は半信半疑で最悪姫様に蘇生してもらおうとか思ってたんだけど、安心して全開できるなっ♪』

するなやっ!つか死ぬ前提で全開するなあ~!!

なんだか良いコンビだ。


『守って…あげたくなった?(^-^』

カオルは胸の前に手を合わせて首を傾げるポーズをする。
チビキャラなので可愛いと言えば可愛いのだが

『ならんわっ!見殺したるっ!』
とにべもないトーニョ。

それに対してカオルはシクシク泣くポーズ。

『ひどいわ~トーニョたらっ。
姫様の事はお守りするくせにっ!不公平だわっ!(;_;)』

『当たり前やっ!』

『なるほどっ。愛の差なんですねっ!
可愛い姫様とリアルでラブラブだからゲーム内でもお守りしちゃってるんですねっ、わかりますっ』

『何をいまさら当たり前の事言うとるん?恋人ん事守るんは当たり前やん
いくらゲーム内かてあーちゃんの事殴らせるなんて事させへんわ』

ピッキ~ンと凍る空気……

『え…?うそ…冗談…のつもりだったんだけど……ホントだったん?』
というカオルの言葉に続いて

『馬鹿……』
というアーサーのため息が振ってくる。


『ま、ええやん?別にリアル人物特定するわけやないし。
ちゃんと言うとったほうが、あーちゃんナンパ目的で来る奴とかいなくなりそうやしな。
一応言うとくと、俺らのギルド、リアフレ4人で作っとるねん。
せやから、ギルド名も日本語で棕櫚。
花言葉が不変の友情ってことでつけたんよ』

と、アントーニョが堂々と暴露した。


「そう言うといた方が返って怪しまれないやん?
女キャラ作った時点で色々今さらやろ?」

と、その元凶なのにリアル隣で堂々と言うアントーニョに、アーサーは割り切れないながらもうなづいた。


『あ~なるほどねっ。リアフレ皆で始めたんだ~、楽しそうでいいねぇ~。
ギルド名も考えてるね(^o^)』

とりあえずカオルもそれに乗って、なんとか凍り付いた時間が動き出した。



こうしてこの日はそのまま和やかに終わった。

カオルは昨日フランとアリスとはフレカ交換してたので、その日はトーニョとフレカを交換。

≪ノリの良いおもろいやっちゃな≫
と、アントーニョが珍しく褒めていて、アーサーもうんうんとうなづく。

≪なんだよ、お前ら俺様だけはぶりやがって≫
と、ギルは一人知らされずに拗ねるが、

≪今度はギルも一緒に行こうな。
今日は専門の釣り役がいなかったからギルがいるときっともっと楽になるし≫
と、アーサーに声をかけられて

≪おう、まかせとけ!≫
と、機嫌を直す。

目論見は外れたものの、人見知りのアーサーが珍しく楽しんでいるのを見て、フランもなんとなく毒気が抜けて、ま、いっかと思う。

少なくとも誰が気付かなくても、今こうしてアーサーが楽しんでいるのは自分が見つけてきたメンバーによるものなのだ。

今はとりあえずそれでいい。



全員和やかな空気のままその日のゲームは終わった…ただ一人…終始無言だったガーディアンの事は誰もきづかないまま……。



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