オンラインゲーム殺人事件再びっ1章_8

どちらにしても作って決定してしまった物はしかたない。
このゲームはキャラの作り直しはできないので、ギルベルトもすっぱり諦めた。

「ギルド名決めようぜ、ギルド名」
気持ちを切り替えてギルドの意味を説明、名称を募集する。


「あ~じゃあお兄さんねぇ…」
「却下っ!」

まず頬に手を当てて口にしたフランシスのつぶやきは皆まで言う暇を与えられずにギルベルトにより却下された。

「え?何?まだ何も言ってないよ、お兄さん!」

「あ~うん。ギルちゃん正しいわ。
フランが好むような名前背負って外に出るの俺も嫌や」

「え~!トーニョ、お前だってどうせトマトなんちゃらとか変な名前考えるでしょっ!」

「トマトええやんかっ!」

「お兄さんトマトなんちゃらなんてギルド名背負って歩くの嫌だからねっ!」

「え~?!トマトのどこがあかんねんっ!」



お前らちょっと黙れっ!!

延々と低レベルの争いを繰り広げそうな二人にギルベルトがストップをかけた。

「ギルド名はアーサーに決めてもらうっ!それで二人とも文句ないなっ?!」

おそらく自分が決めても納得しないだろう二人を黙らせるのにはこれが一番とばかりにギルベルトは宣言した。


「え??俺??」

いきなりなんの脈絡もなく指名されたアーサーはポカ~ンだが、アントーニョもフランも思い切りうなづく。

「ま、あーちゃんがつけた名前ならええわ」

「まあ…ね。お兄さんだってアーサーがつけるなら例え“トマト王国”だろうと我慢するよっ」

「あ~、じゃあそれでええやん!トマト王国!」

「だからっ、違うでしょ!アーサーのセンスだったらちょっとアレな名前でも譲歩するって言ってるだけでっ!」

「あ~!!もう二人とも黙れっ!!アーサーが考えられねえだろうがっ!!!」

バン!!と珍しくギルが激昂したように机を叩いた。

さすがにピタっと止まる二人。


「もうこいつらうるせえから、アーサー決めてくれ。
どんなんでも文句は言わねえし、言わせねえ」

ギルに言われて、アーサーは考え込む。


自分だけではなく、他の3人も付けることになるものなので、あまりに趣味に走ったファンタジーチックな物でも迷惑だろうし…かといってありきたりなのもつけたくない。


「……Hemp palm……でどうだ?」

すらすらっとメモに綴りを書くと、アントーニョとフランは黙ってギルベルトに視線を送る。

「…や、やっぱりダメか?」
おずおずと聞くアーサーに、ギルベルトは大きくため息をついた。


「いや、わりい。意味がわかんねえだけ。たぶんこいつらも。
それってどういう意味なんだ?」

あ、そうなのか…と、アーサーはきょとんとする。


「えと…な、棕櫚」
説明を受けてもさらにわからないアントーニョとフラン。

唯一ギルベルトだけそこで理解する。


「ヤシか。明るい印象で?」

せいぜい常夏なイメージしか思い浮かばず、さらに聞くと、返ってきたアーサーの答え。

「いや…花言葉が、勝利とか不変の友情とかだから…いいかなと」

「「「おお~~!!!」」」
感心する悪友3人。

「さすが俺のあ~ちゃんやなぁ♪」
「花言葉とか、いいねぇ」
「勝利とか不変の友情とかぴったりだよなっ!」

と、好評のうちにギルド名もHemp palmに無事決定。



4人ほぼ同時に全て完了のボタンを押すと、画面が一瞬暗くなって、4台のPCからほぼ同時にプロローグの音楽が流れ始めた。


前回の時は12名しかやらない簡易版だった事もあって、中世のお城のようなものをバックにストーリーが流れるだけだったのだが、今回はさすがに凝っている。

柔らかな日差しの降り注ぐ礼拝堂のようなところで祈りを捧げている美しい姫、アリア姫。

その礼拝堂の日差しがだんだんかげり、姫は祈りを中断して曇ってくる空に目をやった。

雲は空を覆いきり、やがて雷鳴が轟き始める。
暗い空に出来た裂け目から魔物が現れた。
平和な国を蹂躙する魔物達。

「どうか…魔物から国をお守り下さい…」
再び祭壇に向かって祈りを捧げるアリア姫。

光る祭壇……
天使のように背中に翼のある神、イルスの像から光が放たれ、姫の後ろをたくさんの光の筋が照らす。

「聖なる姫よ。祝福されし神の兵を与えよう。この者達はいつか闇を払い、この世に完全なる平和をもたらすだろう」

光が人間の形を取って行き、自分が作ったキャラもその中の一人として現れた。
姫が振り向いて口を開く。
「みなさん…どうかこの国をお救い下さい」
こうして4人は再度イルヴィス王国へと降り立った。





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