キャラ制作組が作った自分達のキャラを見て絶叫する秀才組。
「やって、これならぜ~ったいにあーちゃんやってわからへんやん?」
「だからって女キャラにする事ないだろっ!」
アントーニョにさすがに険しい顔で詰め寄るアーサー。
そこでアントーニョは急に真面目な顔になって、アーサーの両手を取り、その顔を覗き込んだ。
「……あーちゃん…聞いたって?」
滅多にない真剣な表情に、静かに訴えるような普段より若干低い声。
アーサーより濃い色のエメラルドグリーンの瞳は憂いを帯びた視線でアーサーをとらえた。
「な…なんだよ…」
思わず怒りもひっこんでそう問うアーサーに、アントーニョは真剣な表情のまま顔を近づけ、チュッと軽く口づける。
「…っ!!!」
怒る余裕すらなく、真赤になって口をぬぐうように握った拳を持っていくアーサーの両の手をアントーニョはまた自分の方へと引き寄せて、視線をアーサーの手に落とすと今度は手に静かにくちづけた。
「あーちゃんに無理させたないねん」
と、視線だけをあげて唇はアーサーの手に押しあてたまま、アントーニョは低い声で言う。
「あーちゃんやってわかるキャラのままやったら、あーちゃん何らかの演技して自分やないように見せなあかんやん?
あーちゃんがそれを楽しめるような子やったら、それはそれで止めへんけど…
俺が知っとるあーちゃんは頭ええくせに不器用で、そういうの苦手やろ?
どうせ一緒に遊ぶんやったら楽しんでるあーちゃんが見たいねん。
女キャラやったら無理して演技せんでもあーちゃんやってわからへんから…。
バレへんように無理して緊張してるあーちゃんは見とうない…
…って…俺の我儘なんやけど……許したって?」
と、そこでアントーニョは初めてアーサーの手から唇を離して、少し眉を寄せて困ったように笑みを浮かべる。
「俺の事怒ってもええけど…ゲームは楽しんでな?」
と言われてアーサーは真赤になって言葉もないままうなづいた。
「…もしかして…あの調子で落としたのかな?」
「…かもな…」
二人の世界を遠い目で見ながら語る悪友二人。
「アーサーがちょろいのか、アントーニョがあざといのかどっちだ?」
と聞くギルベルトに
「うん…両方じゃない?
ていうかさ…お兄さん油断してたよ。トーニョって実はタラシだったのね…
そう言えばあいつバカみたいな事ばかりしてるのに、何故かモテルもんね…」
とフランは大きく肩を落とした。
「ところで…俺は誤魔化されるネタはないぞっ?」
と、そこで今度はギルベルトがフランに詰め寄った。
「え?え?お兄さんに言ってる??」
殺気立つギルベルトに焦るフラン。
「トーニョだって共犯よ?」
と、思わず声を大にするフランに、少し離れた所で二人の世界を作っていたアントーニョがシレっと言った。
「あ~、ギルちゃん堪忍な~。
いくらバレへんためやって、あーちゃん一人女キャラ可哀想か~って思ったんや。
無理はさせたないんやけど、嫌な思いもさせたなかってん。
その点ギルちゃん一緒やったら遊び感覚でええやん。
ギルちゃんもとばっちりで悪いけど、あーちゃんに無理させるくらいやったら俺がギルちゃんに怒られたったらええかなって思ってん。ほんま堪忍な」
しおらしく謝罪するアントーニョ。
そこで
「トーニョ…」
と、ウルっと感動したような目でアントーニョを見上げ、それから
「俺のせいで…ギルごめんな」
と、謝罪するアーサーを見たら、ギルベルトも何も言えない。
あざとい…絶対に面白がってやったくせに怒るに怒れない状況を作るあたり、こいつ絶対に本当は頭いいんじゃねえか?と思いつつ、ギルベルトは諦めのため息をついた。
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