序章
「社を率いるには少々若すぎないかね?」
社長、副社長、そして先代から後見を任されていた先代の親友であり大手取引先の会長ヴァルガス老の3者会談で、副社長のスミスは苦い顔で反対の意を唱えた。
「いや、年齢は関係ない。
年など嫌でも取るのはご両人ならお分かりだろう?
必要なのは能力の有無だと思うが?
あいつは日本一の海陽学園主席で生徒会長だ。その能力は十分あるはずだ。
むしろ若いうちに継げばそれだけ長く社を率いる事ができる。」
その自分の祖父ほどの年の…そう、それこそ祖父の頃からの重鎮であるスミスにさらに意をとなえるのは若き社長スコット。
微妙に張りつめた空気の中、対立する若き社長と老齢の副社長。
それをヴァルガス老はあおる事も止める事もせず、ゆったりと葉巻をくゆらせていた。
「頭でっかちのお子様に人を率いて行くのはまだ無理だ。
せめてあと10年は代理をたてた方がいい」
スミスの言葉に
「ほお?で、その間に副社長中心の組織ができあがりというわけですか?」
と、スコットは冷笑する。
「何を!!私はただ社のためを思って!!」
一触即発。
そこでようやく
「あ~ちょっとお前ら落ち着け!」
いきり立つ二人を制して、それまで黙ってたヴァルガス老が苦笑した。
「ようは…勉強できてもカリスマは別って言いたいわけだろ?
じゃ、こうしよう。
俺は坊主を試す事にする。
方法は…なに簡単な王様当てゲームみたいなもんだ。
王様は王様と名乗らず家臣が敵より先に王様を見分けてたどりついたらスコットの勝ち。
たどりつかなきゃスミスの勝ちだ。家臣は俺が、敵はスミスが出す。いいな?」
理屈抜きにその直感だけで社を大きくしてきたヴァルガス老は、先代社長であるスコットの祖父が絶大の信頼を置いており、自分の死後、社に何か方針の違いが起こった場合は彼に従うよう遺言で言い残している。
ゆえに社長、副社長であろうと、善意の第三者であるはずの彼に異を唱える事はできない。
二人とも不承不承うなづいた。
「「で?その方法は?」」
と、こればかりは双方同じことを聞いてくるのに、ヴァルガス老はにやりと笑う。
「最近な、とある会社のスタッフ引き抜いて作ってるモンがあってよ。
軌道に乗ったらおめえんとこの会社と一緒にやろうと思ってたんで丁度いい。
こいつを使うぞ」
と、出してきたのは一枚のディスクだった…。
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