正直…衝撃が大きすぎてどう対応していいのかわからない。
自分は好かれる人間じゃないということは、いつも自覚はしてきた事だった。
親も祖父も同級生も…みんな自分より双子の弟が好きだった。
アントーニョとアーサー以外…。
でもその二人がくっついてしまえば、自分は本当に一人ぼっちだ。
小学校時代…弟とは別のクラスになって比べられる事はなくなったがその代わり友達もいない…そんなロヴィーノの隣の席で気さくに声をかけてきたのが松坂だった。
――確かに愛想ないけどさ、弟よりロヴィの方がなんつ~か…面白い。
明るくてクラスの人気者なのにそう言ってロヴィーノといてくれた。
アントーニョのように無条件に好意と愛情を向けてくれる存在ではないにしても、他のように遠巻きにせず、仲良く接してくれた数少ない友人の一人だった。
そのアントーニョもアーサーに出会って、好意は無条件ではなく、ロヴィーノの初恋の相手でもあるアーサーに必要以上に近づかないことという前提条件がついた。
アーサーの方もアントーニョの事が好きで二人は恋人同士で……ロヴィーノは一人になった。
そんな時、祖父の所に引き取られるため転校して別の学校になった小学校時代の友人からの連絡。
嬉しかった。
自分にはアントーニョとアーサー以外にも友人はいる…。
しかしそれも…友人…と思っていたのは自分だけで…それどころか、そこまで嫌われていたのか…。
いや…嫌われてると言うレベルではない。憎まれていた…。
自分は世界中に疎まれていたのか…
何がいけなかったのだろう…
…消えたい…このまま自分が消えたらきっと幸せになれる人間が大勢いるんだろう…
大勢の人間を不幸にしてまで自分が存在する意義がどこにあるというのだ…
ロヴィーノは奇しくも1年前、自分に似た性格のアーサーがやはり今の自分と同じ様に友人だと思っていた早川和樹に殺意とも言える憎悪を抱かれていたのを知った時と全く同じ事を考えている。
「おい、不穏な事考えてる様な目をすんなよっ」
その時いきなり上から何かがヒラヒラと振ってきた。
「…?」
白い…ハンカチ。
それを手に取ってロヴィーノが涙に濡れた顔をあげると、その頬にピタっと冷たい物が押し付けられる。
ミネラルウォータのペットボトルだ。
「水分消失した分、補給しとけよ、ちゃんと」
相変わらず冷静な声でそう言うと、ギルベルトはベッド脇まで椅子を引きずってきて、それに腰を降ろした。
こいつはどうしてこんなタイミングで現れるんだ…。
いつもいつも測ったように居て欲しいタイミングでして欲しい事をできる男。
こんなんだったら自分も一人ぼっちになったりしなかったんだろうか…。
「ほら、もう大きいんだから、泣くなっ」
ギルベルトがハンカチに顔をうずめたまま嗚咽するロヴィーノの頭をソッとなでた。
「てめえが悪いっ!」
ロヴィーノはしゃくりをあげながら言う。
はっきり言って…ロヴィーノ自身でも何が悪いなんて説明できない、ただの八つ当たりなのだが、ギルベルトは怒るでも困るでもなく、ただ笑った。
「なになに?俺様が良い男すぎんのがわりいって?」
「だ~れ~が~そんな事言ってんだよっ!!」
プスっと思わず睨みつけて、次の瞬間バカバカしさに吹き出すロヴィーノに、ギルベルトは
「ま、おまえには小鳥さんのように華麗でかっこいい俺様が側にいてやんよっ」
とくしゃくしゃっと頭をなでる。
「華麗でカッコいい小鳥ってなんだよっ。」
「俺様みてえな小鳥っ!」
「答えになってねえよっ」
「ま~いいじゃねえかっ。
お互いアントーニョのタゲを外しながらアーサーの幸せを見守りつつ、お互いが一番の相棒っ。
なんかカッコよくね?」
「よくわかんねえ」
「そこはわかれよっ!」
ぷく~っと膨れるギルベルトにロヴィーノは吹き出した。
祖父のようにデロデロに甘やかしてみせるわけじゃないのに、すごく甘やかされている気がする。
嬉しい…だが、祖父やアントーニョなど今まで甘やかしてきた相手に対するのと違って、自分も相手の役に立ちたい…甘やかしてみたいという気も同時にしてくる。
「“相棒”…か。でも悪くねえな」
「だろ?」
「なんかカッコいい」
「だろだろっ?!お前だったらわかると思ったんだっ!!」
そんなやりとりのあと、ギルベルトは軽くまたロヴィーノの頭をなでると、
「ということで…俺様の相棒ならもう平気だと思うが、これは一応俺が毒味済みの水だから、水分補給しとけ」
と、ベッドの上に転がっているミネラルウォータのペットをまたロヴィーノに手渡した。
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