結局ロヴィーノはギルベルトの部屋にお邪魔している。
「んー、そう思うなら行ってみるか?」
「いや、いいっ!」
気遣わしげに眉を寄せて想い人の心配をするロヴィーノにギルベルトが問うが、ロヴィーノは慌ててブンブンと首を横に振った。
アントーニョの行動に勘違いしたさきほどの事が尾を引いているらしい。
そんなロヴィーノにクスリと笑みをもらし、ギルベルトは
「ま、フランも行ってるから、何かあったら連絡来ると思うけどな」
と言いつつ、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを出して、ロヴィーノに投げてよこした。
さんきゅ、とそれを受け取って口をつけると、ロヴィーノが
「ところでさ…」
と切り出す。
それだけでギルベルトは
「あ~、さっきの水野さんの事か?」
と、察したらしい。
それだけでわかるギルベルトに目を丸くしながらもロヴィーノがうなづくと、ギルベルトは自分もミネラルウォーターに口をつけながら、ベッドの端に腰を下ろした。
「最初に馬鹿様に帰れって言われて斉藤さんが怒った。
これは普通に気が強い人間の反応。
あとの二人は泣きそうになった。これは二通り考えられる。
一つは馬鹿様に思い入れが強すぎてショックを受けている。
一つは単純に気が弱くて動揺している。
その後のアーサーの言葉で二人ともホッとしているからおそらく正解は後者。
よって彼は非常に気が弱い人間と推測できる。
だから立場的強者であるお前からいきなり何か声をかけられた事にすごく緊張してたと、まあそういう事。
あのままお前が番号教えろと言っても怯えて教えたと思うけどな。
そのかわり今後こちらから聞いた事以外の、向こうからの能動的協力というのが望めなくなる。
彼は何かあった時に自分だけで抱え込むのが怖い人間だから、警戒心を解いてやれば自分の方から勝手に情報を与えてくれる非常に…言い方悪いが便利なタイプの人間なんだよ。
だから…緊張しないように接してやるのが得策」
なんというか…本当にお前は高校生か?と、聞きたくなった。
もう自分と比べようなんて気もおきない。
伊達に迷探偵と言われて何度も事件を解決してきた男ではないということか。
推察力が違う…。
この男でもアーサーの事はダメだったんだから、おそらく自分なんかじゃ全然太刀打ちできなかったんだろうな…と、ロヴィーノは今更ながら改めてそう思った。
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