「あ~びっくりしたぜ…」
アントーニョとアーサーの少し広めの部屋の正面に位置する暗い空き部屋で誰にともなくつぶやくロヴィーノ。
その脳裏にはさきほどアントーニョ達の部屋で見た光景がクルクル回っている。
まあ…つきあっているどころか一緒に暮らしているくらいなのだから、やることはやっていると考えるのが普通かもしれないが、幼い頃から知っているアントーニョと下手をすれば自分よりも幼く見えるくらいのアーサーがそういう事をしている図というのが、今ひとつ想像できなかった。
(ここ…荷物置き場なんだな)
ロヴィーノは少し落ち着いて周りを見回した。
部屋の並びとして、2階の端っこにある2人の部屋の正面と斜め正面は空き部屋で、その隣から5部屋が高校生組の部屋として用意されている。
なぜ端から詰めず、隣一部屋と正面とその隣の二部屋ほど空き部屋にしたのかは聞かないでおこう。
主に…声が響いたりとかしたらというアーサーの恥じらいとかそういう理由かもしれないとは思うのだが…。
しかし空き部屋を空き部屋としておくのもなんとなく理由がアレな気がして恥ずかしかったのだろう。
それを荷物置き場として利用しているらしい。
部屋の床には撮影機材やら布地やら諸々が置いてある。
部屋の造りは当然ながら全く一緒。
さて出ようか…とロヴィーノがドアに向かいかけた時、不意に
(ヴゥ…ウゥウ…)
という、獣のうめき声みたいな物がかすかに聞こえた。
見たくない…とは思うものの、気になる訳で…
おそるおそるロヴィーノが声が聞こえてくる壁の方を振り返ると…その壁にボ~っと浮かび上がる顔。
そう…顔だけが壁に浮かび上がっている。
お…ば…け…
そう…ロヴィーノはそれがものすご~~~く苦手だった。
そして…それを目の前にして緊張と恐怖がピークに達した時…ぱったりとロヴィーノは気を失ってその場に倒れた。
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