迷探偵ギルベルトの事件簿後編5

「ほな、親分もう飽きたし、ギルちゃんチェンジしたって~」
と、そこでいきなりあっさりそう言ってアーサーの隣に来て座るアントーニョ。

「…おい……」
と呆れた目を向けるロヴィーノに、

「まあここから先は普通に事情聞かねえとだからな」
と、ギルベルトは笑って立ち上がった。

椅子から立ち上がってテーブルの向こうに行くまでは、本当にほんの少しの時間だ。

しかしそのわずかな時間の間に、ロヴィーノの隣で励ましてくれていた時の柔らかな空気が消え、どこか研ぎ澄まされたシャープな空気をまとう。


――ああ…ちくしょう。かっこいいな…

残念なイケメン…イケメンなのに残念…などと普段揶揄されるひょうきんな男はそこにはいない。


「今回はな、親分があのアホにあーちゃんに近づいたら殺るで?って思い知らせてやりたくて、影響ないあたりを変わってもろうてん」
と、わざわざアントーニョが言うところをみると、たぶん違うのだろう。


容疑者の第一候補となるような現状を説明しなければならない時に自分が心細くならないように…絶対にそんな事は口にはしないが、おそらくそんな理由でロヴィーノの供述の間側にいられるように、ギルベルトが取り計らってくれたのだ。

大丈夫…これからどんな展開で何を言われても大丈夫だ…と、ロヴィーノはそこで心の底から思った。


「というわけで…バトンタッチしたんで、サクサク行くぞ」
と、アーサー、ついでジェニーと事情を聞いて行き、ギルベルトは視線を中田へ。

「俺?」
と自身を指差して聞く中田にギルベルトがうなづくと、中田はスッと立ち上がった。

「まあ…他人と違う行動取ってねえし?この家に関しても部外者。
誰に好意を持っているわけでも悪意を持っているわけでもねえように見えるから、客観的にそれぞれの感情の流れとか、どう見えたか教えてもらえると助かる」

柔らかな調子でギルベルトにそう言われて中田は少し悩む。

「あの…もしかしたら主観も入るかもしれないけど…」
と前置きをする中田の態度に

自分でそれを考慮できる人間の考え方は、本当に根拠のない独りよがりな主観の可能性は限りなく少ないから安心しろ。」
と、ギルベルトは変わらず穏やかな様子で言う。

それに少し安心した様に中田は話し始めた。

「まず最初の時点では紗奈は小川が好きで、小川はジェニーが好きって感じだったのが、小川がトーニョの恋人あーちゃんに一目ぼれ。
そこでギルベルトを恋人と言って小川に諦めさせようとしてたジェニーがその必要を感じなくなって嘘をばらしたら、今度は紗奈がギルベルトを好きに。
つまり小川があーちゃんに、紗奈がギルベルトに片思いで、紗奈はギルベルトと仲の良いロヴィーノに嫉妬。
あとはトーニョとあーちゃんは両思いカップル
ギルベルトとロヴィーノは親友?
で、あーちゃんはトーニョががっちりガードしてて小川は近づけなくて、紗奈はロヴィーノに敵対心を持ってたけど、一緒に食事作ってるあたりでなんだか和解した感じだったな。
ジェニーと瞳はここにいる面々との恋愛には興味なし。
そんな感じに思ってた」

中田が考え考えしつつ言うと、ギルベルトは

「つまり…事件が起こった時には紗奈とロヴィは特に確執はなさそうだったってことだよな?」
と結論付けると、

「さんきゅ。もう戻って良い」
と、中田をうながし、意外にサラっと終わって中田はホッとした様子で座りなおした。

「ま、というわけで…だ、紗奈に関してなんらかの関係があるのは、俺様と小川…は好かれてて、ロヴィは第一発見者。瞳は第二発見者って感じだよな。
てことで、状況確認もラスト1人だ。

一番冷静そうだし、客観的な状況把握が出来てそうな上に、重要な場面にかなり居合わせているからな。

俺の方から~の時とか聞かねえから、自分から見た今回の一連の出来事の大まかな流れと気になる点…多少私見が入っても構わないのでを説明してもらえるとありがたい。
トーニョの説明だと今ひとつ警察もわかりにくかったかもしれねえし」

と、ギルベルトが苦笑すると、


「親分はあーちゃんにちょっかいかける奴に思い知らせられればそれでええねん」
と、アントーニョは口を尖らせた。


そのアントーニョの言葉に瞳はギルベルトと同様、少し呆れたような視線をむけつつも、

「わかったわ。何度も意味のない重複をしても仕方ないから、多少は省略しつつ全体像を追います」

そう言って小さく息を吐き出した。

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