「救急車呼んでくれっ!!」
バン!とリビングのドアを開けると、ロヴィーノは叫んだ。
と立ち上がって駆け寄るギルベルトの腕をぎゅっと掴んで、ロヴィーノは青い顔で言う。
「紗奈さんが…倒れてて…」
「倒れて?それで?怪我なのか?それとも病気でか?」
「わかんねえっ。」
「そのあたりわかんねえと救急車呼ぶのも困るな。ちょっと俺様見てくるわっ。」
青い顔で首を横に振るロヴィーノの背をぽんぽん!と落ち着かせるように軽く叩くと、ギルベルトは
「ロヴィ頼むな。」
とアントーニョに言いおいて、自分はロヴィーノと入れ違いに2階へと向かった。
嫌な予感…というか、今までの経験上からくる嫌な想像…。
それは残念ながら外れることなく、紗奈の部屋ところまでたどり着いたギルベルトの目に映ったのは、ドアのところで呆然と立ち尽くす瞳の姿だった。
「紗奈さん…倒れてるって聞いたんだけど、怪我か?それとも病気っぽいか?
外傷とかは?心拍や呼吸は?」
矢継ぎ早に聞くギルベルトに、瞳は青い顔で倒れている紗奈を黙って指差した。
その指の先を目で追ってギルベルトは息をのむ。
「まじ殺人か…」
床に倒れている紗奈の左胸にはピックが突き刺さってる。
胸にちらりと目を落とすが上下していないところを見るとおそらく呼吸をしてない…つまり死んでいる。
「必要なのは救急車より警察だな、こりゃ。…知り合いにいるから呼ぶな?
それまではここに入らねえように」
ギルベルトの言葉に瞳は
「え?」
と不思議そうな目を向ける。
それにギルベルトは苦笑すると、
「なあんでか俺様よく殺人事件とかに巻き込まれててな、一部の警察とはお馴染みさんなんだわ」
とやんわりと瞳を部屋の外にうながした。
「もしもし、ギルベルト・バイルシュミットです。
本当にたびたび申し訳ないんですが……」
携帯で迷わずかけた先は本当に毎度おなじみとなりつつある海陽のOBで本庁の警視、サディクだ。
『おめえ…まさかまたか?』
と、さすがに4回目ともなれば呆れたような声が返ってくるわけだが、本当に自分でも呆れるレベルの殺人事件遭遇率なので、もう笑うしかない。
「はい。またです。出来れば仕切らせてもらえると……」
ザ~っと軽く脳内で状況を考えて行くと、普通に考えればロヴィーノが一番の容疑者にされてしまう。
もちろんロヴィーノがそんな事をする人間ではない事は曲がりなりにも相方を名乗る自分が一番良く知っているので、一時でもそんな汚名を着せたくはない。
それゆえの民間人としては越権行為になる依頼なのだが、サディクは電話の向こうで
「おう、素直で従順なあたりを送ってやるから、華麗に解決してまた俺んとこの検挙率UPに協力してくれや」
と、豪快に笑って了承してくれる。
本当にOB様々である。
こうして警察の方への手配が終わったところで、ギルベルトは今度はアーサーにメールで秘かにいくつかの依頼をする。
そして了承する返答をもらうと現場を軽く見まわして、それからいったんリビングへと降りていった。
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