小川の家の別荘で小川の従姉妹の瞳が事前の準備とかをしていたので、滞在中は他が食事の支度をしようという事になって、
「じゃあ…!」
と目を輝かせて立ち上がるアーサーを、アントーニョとギルベルトが即両側から顔面蒼白で止める。
と泣かんばかりに止めるアントーニョの態度に、こちらも目を潤ませるアーサー。
もちろんアーサーの制作する食物兵器の数々を知らない他の面々はぽか~んとしている。
小川にいたっては
「姫の料理なんて最高じゃないかっ。なんで止めるんだ。なんなら俺の分だけでも…」
などと言い始め、料理に関しては好きなのに作らせてもらえないアーサーが思わずキラキラした目を小川に向けて、アントーニョの背後から黒いオーラが立ち上る。
(あいつ…ダークマターで毒殺するって手もあるなぁ…)
と、そんな事を考えているのが丸わかりな凶悪人面に、
(おま…落ちつけよ?今回はお前らの仲とお前の彼氏力を見せつけるために来たんだろ?)
と、ロヴィーノが慌てて止めに入る。
そしてギルベルトにアイコンタクト。
「あ~、たまには俺様とロヴィで作るか?」
とギルベルトがそれを受けて手をあげると、
「あたしっ!あたし作るっ!!」
と、紗奈がすかさず名乗り出た。
「ギルベルト君一緒に……」
とさらに続けようとする紗奈に、今度は瞳が
「じゃ、動いてもらえるならギルベルト君、お客様に悪いんだけど、手配した大量の飲み物とか一緒に運んでもらえる?
あーちゃん…は、料理ダメなのかな?」
と、その言葉を遮り、さらにアーサーについては空気を読んだのか、アントーニョに振った。
そこでアントーニョにアーサーを始めとして一部の視線が集まった。
ここで…どう答えるのかとギルベルトとロヴィーノははらはらとしたが、アントーニョはロヴィーノ、ギルベルト、紗奈のやり取りの間に平静を取り戻したらしい。
「おん。あかんねん」
とそこで言葉を切るとアーサーの手を取り、指先にちゅっと口づけて言う。
「刃物や火なんか使うて、大事な大事なあーちゃんのこの綺麗な手に万が一にでも傷でも付いたら親分発狂してまうから、料理とかは全部親分がやっとるんや」
(うあぁぁ~~このラテン男は……。これは俺様には真似できねえ…。)
指先に口づけたままにやりと笑みを浮かべるアントーニョに、なんだか妙に恥ずかしい気分になってギルベルトは片手を口元にやって無言で紅くなる。
「ん~、じゃあ食べた後の食器洗いとかなら怪我もしないし……」
という瞳の言葉にも
「おん。親分がやるな?」
と、アントーニョはにこりと答えた。
もう空気が甘すぎて口から砂糖を吐き出しそうだが、ロヴィーノは知っている。
ギルベルトは小川に見せつけるためと思っているのだろうが、これは見せつけるためではない。
アントーニョのスタンダードだ。
デロデロに甘い空気に固まる面々だが、あくまでマイペースなジェニーの
「じゃ、あたしも料理出来ないから皿洗い組ねっ」
で、再び空気が動き出す。
「じゃ、そういうことで、一応クリームシチューの材料用意してあるから。
作り方大丈夫?」
と、固まっていた瞳がハッとしたように仕切りだすと、ロヴィーノは
「平気。料理は得意だから」
と、立ち上がった。
さらに瞳はちらりと視線を従兄弟の方へ。
「ゲストにばかりやらせてないで太一もキッチンに行きなさいよ」
と言うが、太一は
「ゲストをもてなすのが主の仕事だろ。裏方はお前やれよ」
と飽くまで拒否。
どっかり座ったまま動かず、最終的に瞳も諦めてギルベルトと共に飲み物運びにとリビングを出て行った。
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