迷探偵ギルベルトの事件簿前編5

そして当日…ジェニーの塾仲間でよく勉強を教えてもらっているという女子高生で、小川太一の従姉妹の瞳と、同じ塾の仲間で小川に気があるという紗奈、そしてもう一人同じ塾の仲間の男子校生の中田と合流。

小川の家で用意したマイクロバスで別荘まで送ってもらう事になったのだが、ここでちょっとした出来事があった。


まず当たり前に小川が遅れていて、他は手持無沙汰だったので

「アントーニョ・ヘルナンデス・カリエド。海陽学園3年。
みんなトーニョって呼ぶからそう呼んだってな」
と、まずアントーニョが自己紹介を始めた。

次いで自分の陰に隠れるようにしているアーサーにちらりと視線をやって、

「この子はあーちゃん。俺の大事な大事な世界でい~っちゃん大事な恋人様やから、ちょっかいかけんといてな。」
と、紹介し、そのあとを引き継いでジェニーが

「こっちの茶髪の可愛い子はロヴィーノ君。トーニョ達の後輩。
で、隣の銀髪のイケメンが噂のギルベルト先生。
先生とトーニョは今年海陽に転入するまでは同じ学校のクラスメートだったんだ」
と、にこやかにあとの二人を紹介すると、瞳がクスリと意味ありげに笑って

「恋人の…って言わないで良いのかな?もう」
と、ジェニーに確認をしてきた。

どうやら彼女は事情を知っているらしい。

その質問にジェニーは思い切り頷いた。

「うん。まあギルベルト先生ならイケメンだし秀才だし強いし料理も出来るしさ、本当に付き合っても良いんだけど、ロヴィーノ君に悪いからっ
と、楽しげに瞳と視線を交わす。


「え?ええ?そうなの??」
と、こちらも途端に楽しげな瞳。

どうやらそういう趣味の乙女らしい。
そんな二人を唯一の男の中田が若干うんざりしたような表情で遠目に見ている。

「なんだ。ジェニーの彼ってわけじゃないのね」
と、そこで動き出したのは紗奈だ。

「よろしく、ギルベルト君。隣の席座りましょ」

にこりと笑みを浮かべてさりげなくギルベルトの腕を取って密着する紗奈に、顔をひきつらせるギルベルト。

助けを求めるようにジェニーに視線を送るが、瞳と盛り上がっているジェニーは気づかない。

次に悪友のアントーニョに視線を移し…諦める。

アーサーが隣にいるのに、アントーニョが自分を気にして気遣うなんて事はあり得ない。
そんな行動に出たら本当にそれはアントーニョの偽物だ。

そこで覚悟を決めてソッと紗奈の手を腕から外すと、少し身をかがめてにこっと微笑んだ。

「悪いな、フロイライン。俺様ロヴィーノの隣が指定席だから」

でも荷物は運ぶな?と、紗奈が横に置いたボストンをバスに運び込む。

一瞬ぽか~んとして、しかし自分のバッグを持ってマイクロバスに乗り込むギルベルトの背中をハート型になった目で追う紗奈。

まあ…このところのエスコートレッスンの成果と言えば成果なのだろうが、こんなところで発揮しなくても…と、ギルベルトの姿がバスに消えたあと、紗奈に鬼のような目で睨まれたロヴィーノは冷や汗をかきながら思う。

その後小川が来て出発とあいなったあとも、後ろから鋭い視線をキリキリ感じる。

何が悲しくてベッラにライバル視されなきゃなんねえんだ…と、居た堪れなさにため息をつきながら、ロヴィーノはなるべくギルベルトとの接触を避けるように、窓の外に視線を移した。


こうして居心地の悪い道中がようやく終わって着いた小川の家の別荘。

当たり前に自分の荷物の他にアーサーとジェニーの荷物を運ぶアントーニョと、同じく瞳と紗奈の荷物を運ぶギルベルト。

そんな二人から出遅れたため、ロヴィーノはせめてもと玄関のドアを開けて女性陣を通していたのだが、紗奈からはまるで親の敵のような目で見られて泣きそうだ。

本当にこれ以上睨まれていたら泣くぞ…と思っていたら、気を利かせてくれたらしい。

瞳が
「紗奈、借りてたDVD持ってきたからさ、部屋行くね」

と、すかさず紗奈の腕を掴んでさっさと奥へと連れて行ってくれて、ロヴィーノもようやくホッと一息をついたのだった。




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