「どうぞ?」
と、ロヴィーノは女性陣が通るまで黙って玄関のドアを開けて待っている。
「ロヴィありがとっ♪」
「ありがとう、紳士ね、ロヴィーノ君。」
と、ジェニーとその友人だという女子高生の瞳はにこやかにお礼を言って中に入って行くが、続くもう一人の友人、紗奈はすごい目でロヴィーノを睨んでツンとそっぽを向いて通り過ぎて行った。
――ちきしょ~、なんで俺がこんな目にっ…
と、ロヴィーノは内心ため息をついた。
ギルベルトがジェニーから恋人のふり依頼を受けて1週間後。
どうしても外せない予定があるというフランシス以外のアントーニョ、アーサー、ギルベルト、ロヴィーノの4人はジェニーに付きまとっていると言う小川太一の家の別荘に来ている。
何故こんな事になっているかというと…結論から言うと、なんと太一のタゲが移った…よりにもよってアーサーに。
ギルベルトとジェニー、アントーニョとアーサーでギルベルトの彼氏指導という名目で出掛けたダブルデート中、街中で偶然小川太一と出会ったのだが、一目惚れをされたらしい。
当日は以前アーサーが女キャラでやっていたオンラインゲームで出会った面々と会うためフランシスが用意した服…白いノースリーブの上にゆったりとしたクリーム色のドルマンニットのざっくり編みチュニックワンピースを着て、下には八分丈の細身のジーンズを着用。
前回と同様にフランシスがそれに軽くファンデーションとリップだけの軽いメイクをして、太すぎる眉を少し隠すように髪の毛を整えると、可愛らしい少女の出来上がりだ。
元が細いせいか、袖が長すぎて萌え袖になっていたりするせいか、170cmあるとは思えない。
とても華奢で小さく見える。
本人が羞恥でエスコートするアントーニョの陰に隠れるように俯いていると、瞬きをすると音がしそうなくらい濃く長いまつげが強調されて、さらに少女っぽい。
そんじょそこらの女では太刀打ち出来ないレベルの美少女…と言っても過言ではない。
そう…ジェニーに言いよっていた小川太一が一目惚れして友人達を招待する予定だった別荘に一緒に来ないかと招待するくらいには…。
断って大人しく聞く男ではないことは、ジェニーがギルベルトに偽の恋人役を頼んだ事でわかっているし、さすがにスカートではないにしてもわざわざ少女にも見えるようなユニセックスな格好をしていて実は男だと言うのは恥ずかしすぎて嫌だとアーサーが言うと、アントーニョがどうしてもというなら彼氏の自分と友人達も同行する事を条件にとOKを出してしまった。
抗議をしかけるアーサーに自信満々に
「大丈夫っ!親分に全部まかせときっ!」
とそれはアーサーも大好きな太陽のような笑顔を浮かべてアントーニョが力強く胸を叩いて見せたので、自分の方も恋人が大好きで内心頼りにしているアーサーはついつい流された。
…が、その後
「あのアホ男が太刀打ちできんくらいの恋人が大事に大事にしとる子ぉやって思い知らせたったらええんやんな」
と、良い笑顔で言われて思い切り後悔する事になる。
そんなアーサーに恥ずかしいから少しでも大人数で…と、元々参加組のジェニーの他に声をかけられたのがギルベルトとフランシスとロヴィーノだ。
もっともフランシスはその日はデザイナーである母親のショウの手伝いで海外で無理という事なので、実際に来るのは二人だけになったのだが…。
とりあえずすっかりタゲが外れて安心したジェニーから
「別にもう二人イチャイチャしててもいいよ~」
と、変な期待をされて困りながらも、ギルベルトとロヴィーノは秘かに二人して『アーサーの幸せを守り隊』を結成している身としては、おかしなちょっかいをかける可能性のある男から断固としてアーサーを守らなければならないので、有無を言わさず巻き込まれである。
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