うさぎのたまごをもらった親分の話3

つるつるとした表面の少しクリーム色がかった大きな卵。

カードには

【可愛いウサギの卵です。愛情をいっぱい注いでくれれば孵ります。
2週間で帰るのでそれまで目一杯可愛がって育てて上げて下さい。】
とある。


「ウサギが卵から生まれるかい」

と、おそらく悪友が茶目っ気で書いたのであろうカードに一人ツッコミをいれつつも、好奇心にテンションが少し上がってくる。


根が優しくて全ての子分がいなくなってしまったあと寂しさに落ち込むであろうスペインの慰めに少しでもなるであろうと続けてくれていた毎年の習慣をそろそろ大丈夫だろうと覆したのだろうロマーノの今回の当事者はスペインなのだから、いつものようにスペインに相談できないとなれば、ロマーノの相談先はスペインに近いフランスだったのだろう。

そこでフランスが気を使って、こんなサプライズに出たのかもしれない。


「ま、ええわ。ちょうど休暇も2週間とってもうた事やし、つきあったろか」

とりあえずもうシェスタの時間だ。
ちょうど良いから卵と一緒に寝てみるか…。

「おチビちゃん、これから親分が自分の家族やで~。一緒にシェスタしようか~」

と、バカバカしいと思いつつも卵に声をかけ、ちゅっとその表面に口づけを落とすと、かすかにコツっと中から音がした


え??なん?ほんまの卵なん?!!

驚きのあまり危うく放り出すところだった卵を慌てて抱え直し、スペインは卵を顔の前に持ってきてまじまじと眺めた。


「自分…ほんま何かの卵なん?」

わかるはずもないと思いつつ声をかけると、卵がふるりと震える。

中に何かいるのは間違いなさそうだ。


得体がしれない気味が悪い…普通ならそう思いそうなところだが、この時のスペインは唯一の家族を失ってぬくもりに飢えていた。

なんでも良いから、誰でも良いから側にいて欲しい気分だったのだ。



顔にふわりと浮かぶ笑み。

ぽかぽかと腹の奥から温かい気持ちが溢れてくる。



「なんの卵なんだかわからんけど、はよう生まれておいで~。
親分と一緒に楽しく暮らそうや」

割れないようにソッと…でもぎゅっと卵を抱きしめて、スペインはベッドに横たわる。

温めた方がええんやろか…と、胸元に抱え込んだ卵にしっかりとブランケットを掛け、

「ほな、おやすみ~」

と、ブランケットの上から頬ずりをして、スペインは少しだけ幸せな気分で眼を閉じた。



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