つるつるとした表面の少しクリーム色がかった大きな卵。
カードには
【可愛いウサギの卵です。愛情をいっぱい注いでくれれば孵ります。
2週間で帰るのでそれまで目一杯可愛がって育てて上げて下さい。】
とある。
「ウサギが卵から生まれるかい」
と、おそらく悪友が茶目っ気で書いたのであろうカードに一人ツッコミをいれつつも、好奇心にテンションが少し上がってくる。
そこでフランスが気を使って、こんなサプライズに出たのかもしれない。
「ま、ええわ。ちょうど休暇も2週間とってもうた事やし、つきあったろか」
とりあえずもうシェスタの時間だ。
ちょうど良いから卵と一緒に寝てみるか…。
「おチビちゃん、これから親分が自分の家族やで~。一緒にシェスタしようか~」
と、バカバカしいと思いつつも卵に声をかけ、ちゅっとその表面に口づけを落とすと、かすかにコツっと中から音がした。
え??なん?ほんまの卵なん?!!
驚きのあまり危うく放り出すところだった卵を慌てて抱え直し、スペインは卵を顔の前に持ってきてまじまじと眺めた。
「自分…ほんま何かの卵なん?」
わかるはずもないと思いつつ声をかけると、卵がふるりと震える。
中に何かいるのは間違いなさそうだ。
得体がしれない気味が悪い…普通ならそう思いそうなところだが、この時のスペインは唯一の家族を失ってぬくもりに飢えていた。
なんでも良いから、誰でも良いから側にいて欲しい気分だったのだ。
顔にふわりと浮かぶ笑み。
ぽかぽかと腹の奥から温かい気持ちが溢れてくる。
「なんの卵なんだかわからんけど、はよう生まれておいで~。
親分と一緒に楽しく暮らそうや」
割れないようにソッと…でもぎゅっと卵を抱きしめて、スペインはベッドに横たわる。
温めた方がええんやろか…と、胸元に抱え込んだ卵にしっかりとブランケットを掛け、
「ほな、おやすみ~」
と、ブランケットの上から頬ずりをして、スペインは少しだけ幸せな気分で眼を閉じた。
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