なので、普通ならいく年たっても変わらぬ容姿で怪しまれそうなスペインでも、金さえ払っていれば気にされない。
だから、ここ数百年ほどはなんとなくムラムラと来る時はここに通っている。
「ようこそ、カリエド様。
今日はどちらを?」
長い長い月日を通い続けるスペインはもう上得意であるため、フラっと訪れても即立派なほぼ専用とされている部屋に通され、女主人自らが挨拶に顔を出し、要望を聞いてくる。
「今日は二人ともあいとるん?」
「はい。」
「じゃあ…アリサの方で頼むわ。」
「かしこまりました。」
慣れた風に進むやりとり。
最近スペインがここに来る時に指名するのは、大抵金髪緑目の二人の娼婦だ。
今日は両方空いていたらしいので、より気に入っているアリサの方を指名した。
「今回は…どちらの戦場へ?」
部屋にはいるなり、いらっしゃいませも言わずに、不躾にそう聞いてくるこの少女は、スペインにだけでなく、客全体に対してそれほど愛想が良い方ではないらしい。
それでも前回まだ癒えきらない傷を抱えていた肩口にチラリと視線をやるその様子に、スペインは愛おしさを覚える。
美辞麗句を並びたてるわけではないが、少女がいつも戦場を転々としているスペインを不器用に気にしてくれている事が、どこか心を温かくする。
「う~ん…まああっちゃこっちゃ行っとるけど…」
と、相変わらずな少女の様子にスペインが笑って上着を脱ぐのを黙って手伝うと、少女はツンとした様子で
「無茶して大怪我負ってこないなら、結構」
とやはり愛想のない言葉を吐いてくる。
「うん、今日は元気やで~。
だから一晩コースやなっ」
そう言いつつ全部脱ぐ間も待てずに、スペインは少女の黄金色の髪に隠れた可愛らしい耳を食みながらささやきを落とした。
そうするとそれまで強気な口調でぽんぽん言いたいことを言っていた少女の白い頬がパッと赤く染まり、子猫のように少し吊り目がちな大きく丸い、綺麗なグリーンの目が、戸惑うように揺れる。
いつものやりとり、いつもの反応に、スペインはやはりいつものように一抹の罪悪感のようなものを感じて不思議に思う。
何故そんなものを感じてしまうのだろうか?
それはきっと、こんな仕事をしているのに、随分と人馴れない初心な反応を示す少女のせいだ…と、いつものようにそう思い込むことにして、華奢なその身体を貪るように抱いた。
アリサの細い首筋から肩までの折れそうな細さと新雪のような白さがスペインのお気に入りだ。
もう一人の娼婦アナと違ってまだ成長途中の肉の薄い身体に興奮する。
自分は少女趣味があるのかもしれない…と、そんな己を振り返ってスペインはそう分析している。
それでも…行為を進め、直接的な性交に至ると感じる違和感。
どんどん冷めていく心。
本来だと最高に盛り上がりを見せるはずの直接的な性交に入る頃には、自分的にはここまで来てやめてはいけないと、半分義務のような気分になってくるのが本当に不思議だ。
そんな風に途中何度か感じる違和感も何もかも振り切るように抱き潰したあとに感じるのは、やっぱり多大な違和感と若干の虚しさと、一抹の罪悪感。
そうなるのはわかっているのに、続ける不毛な行為にため息をつき、それでも身体はすっきりして娼館を出るのも毎度のことだ。
(…あ~…頭は冷えたんやけど、なんやあかんわぁ…)
自分でもすでにもう何がしたいのかもわからず、かといってそのまま城に帰る気にもなれず、それなら気晴らしに露天でも冷やかしていくか、と、スペインはそのまま街に足を伸ばした。
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