ヘタリア座の怪人@オペラ座の怪人1

ヘタリア座…それはかなり古い歴史のあるオペラ座だ。

建築後数百年にもなるその古い建物は上モノの大きさもさるものながら、旧市街地に建つ事もあり、その地下は複雑な地下水路につながっていて、迷路のようになっており、一歩足を踏み入れれば、劇場の関係者でも迷わずに出られるものは少ないというとんでもない建物である。



そんな建物であるせいか、このヘタリア座には近頃おかしな噂がたっていた。

いわく…【ヘタリア座には怪人が住み着いている】というものである。



何かがいるのは間違いがない。

地下から天井から舞台裏の端から縦横無尽に走り回る影は、多くの者の目撃されている。


それは大きなクマだったという者もあれば、実体のない影だという者も、はたまたロップイヤーのような垂れたうさ耳の妖怪だと言う者もいて、正体は不明。


さらに困った事には、舞台稽古中、ポトンポトンと水を垂らしたり、パタパタと足音をたてて走り回ったり、不気味な黒い塊を投げつけてきたりと、いたずらを繰り返してきているのだ。


そして近頃、その怪人から劇場の支配人に手紙が届いた。

いわく、ごくごくわずかなサラリーと、劇場の隅っこの座席を1つ常に彼のために開けておくこと、そして…、衰えの見えるプリモ・ウォーモ(オペラの主役男性歌手)のカルロスの代わりに一介のコーラスである新人歌手、アントーニョ・ヘルナンデス・カリエドをその役に据える事を要求するものだった。


当然正体不明の者からのこの要求は却下されたが、その後しばらくして、舞台のリハーサル中のカルロスにバケツの水が降ってくるという自体が起こり、カルロスは怒って帰ってしまう。

そこでこれが万が一オペラ座の怪人の仕業であったなら…と今更ながら件の手紙の要求を思い出した支配人は、舞台に穴をあけるよりは…と、アントーニョを代役に据えた。

その結果、その素晴らしい美声と表現力で、アントーニョは観客からの喝采を受け、スターへの階段をかけのぼったのだ。






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