こうして恋人を見送って、イギリスはふと思う。
珍しくスペインが沈んでいたのに、何もしていない…。
これって…恋人としていかがなものなのだろうか…。
自分が落ち込んだ時、スペインはあの手この手で色々やってくるのに…。
正しい恋人の図から逸脱している気がして、イギリスはメールをした。
タイトル【即答えろ5分以内に答えろ出ないと殺す】
内容【落ち込んだ恋人の慰め方】
相手?もちろんフランスだ。
他の人間だったらこんなメール送られたら怒るかビビるだろう。
が、フランスももう慣れたもので
【ペットみたいに甘やかせば?】
とタイトルだけの返信。
なるほど、そういうものなのか…。
イギリスは当たり前にそこでメールは打ち切って、一つの決意を持ってスペインのいるキッチンを目指した。
「今煮込んどるから、もおちょい待ってな~」
キッチンに漂う美味しそうな匂い。
料理は大方終わっていて、今何かスープをスペインが煮込んでいる。
これもスペイン用にイギリス宅に置いてある分厚い黒いエプロンを身につけて、鼻歌まじりに料理をする恋人はカッコいい。
しかし今回はそれに見とれていては行けない。
ミッション開始だ。
恥ずかしいが、目的のためには羞恥など感じてはいられない。
「にゃあ~」
と、一声鳴き真似をしたあと、スリッと邪魔にならないようにスペインの肩口に頭をすりつける。
「……っ?!」
スペインの手から握っていたお玉が落ちた。
しかしイギリスはミッションを続けることにして、また、にゃあ…と一声鳴いて、今度はぺろりとその頬を舐めてみる。
すると今度はいきなりスペインがその場にしゃがみこんだ。
あれ?余計に落ち込んだ?
イギリスがきょとんとした目で見下ろすと、目の前でしゃがみこんだままぷるぷると震える恋人は何かを押さえ込んだような声で聞いてくる。
「あの…イギリスさん?
可愛えけど…もう悶え死にしそうなくらい可愛えけど…どないしはったんで?」
「…元気になった…のか?」
落ち込んだわけではないらしい。
一応そう聞いてみると、
「…おん…今なったらあかん別の部分も元気になってもうたけど…」
と、返ってくる。
「…お前落ち込んでたみたいだったから、ヒゲにメールしたら、ペットみたいに甘やかせって返ってきたから…」
と、フランスからの返信メールを見せると、スペインは終始無言。
「………」
「………」
「………」
「…スペイン?」
「うん、まあな。元気になったけど…
可愛えしその方が全然ええんやけど…
フランスが言うとるこれに関して言えば、恋人の方をペットにするように甘やかしてやれ言うことちゃう?」
「………」
「………」
「…ヒゲ…殺すっ!紛らわしい書き方しやがって、絶対に殺すっ!!」
恥ずかしさのあまり真っ赤になるイギリスをスペインは笑って抱きしめる。
「や~め~たって~~。
ヒゲ殺したいなら親分が殺ってやってもええけど、イギリスがなんでもフランスに聞いたりフランスに気持ち向けるのは妬けてまうわ~」
ああ、本当に馬鹿らしい。
プライドの高い大英帝国様が自分のためなら猫の真似までしてくれるのだ。
そこまで愛されてて何を悩む事がある。
もうすっかり立ち直るどころか、いつもより元気になったスペインは、それでも今度は自分のほうが羞恥のあまり涙目な恋人様に言うのである。
――ほんなら…あとでペットみたいに体中舐め回させてもらおか~
その言葉に今度はまた別の意味で真っ赤になる恋人様は本当に可愛い。
ああ、落ち込むのもたまには良いかもしれない。
こうして
「反対意見はきかへんで~」
と、発端になった超大国のようなセリフを吐きながら、スペインは楽しいペットタイムに向けて、とりあえずまた料理へと戻っていくのだった。
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