「イング~!!自分こんなところで何しとるん?!」
…若返っている姿に対するツッコミも、手首を拘束している縄に対するツッコミもないらしい。
嬉しそうな笑みを浮かべるポルトガル。
皆スペインの事をKYだというが、イギリスに言わせればポルトガルほど色々にこだわらない男はいないと思う。
と、手首を出せば、
「何やっとるん、ほんまに」
と子どものいたずらに苦笑するような笑みを浮かべて手首の縄に手をかけた
……ところで、
「ポルトガル~、コピー機動かへんで~」
と、実にタイミング悪くドアが開いた。
凍る空気。
スペインの手からパサリと落ちる書類。
その綺麗な深いグリーンの瞳がスッと細められ、殺気を帯びる。
え?ええ??
と、その視線をたどればイギリスの手首。
それを拘束する縄にかかったポルトガルの手。
「自分……何してくれとるん?」
どっちに対して言ってるんだろう…と、イギリスが悩んでいる一瞬の間に殺気がすごい速さで近づいてきて、目の前のポルトガルが蹴り一撃で吹っ飛んだ。
うああああ~~~~!!!!!
こっええ~~~!!!!!
いや、確かに怒られるつもりで来た。
罵られる気は満々だし、多少なら痛みにも耐性はあるつもりだ。
でも怖いっ!マジ怖いっ!!
単純な痛み以上にこの殺気を向けられるのは怖すぎる!!
壁に激突したままピクリとも動かないポルトガルに青くなるイギリス。
――悪い、ポルトガル。お前の犠牲は無駄にはしねえぞ…俺が生き残るために…
と、ひどいことを考えながら心の中で合掌すると、イギリスは日和見った。
だって、怖いし…。
「……エ…スパーニャ?」
今のスペインに通じるかはわからないが、結婚当時のスペインは涙目で上目遣いに見上げると大抵の事は許してくれた。
なので、もうすっかり涙目にはなっている目でスペインを見上げると、スペインは少し困ったような笑みを浮かべて
『もしかして…エープリルフール用に何かしようとして失敗したんか…』
と小さく呟く。
その一方で
「ああ、ちょお色々あって若干姿形が変わって見えとるかもしれへんけど、確かに親分やで。安心し」
と、イギリスに言って聞かせた。
とりあえずショタ媚び作戦は成功したらしい。
そして、あ、そうか、今日は…と、イギリスはスペインの言葉で思い出す。
今日は嘘をついても良い日だ。
とりあえず利用できる物は利用して、今この状況を乗り切ったらあれはエープリル・フールの嘘だったですまそう。
そうと決めたら、早かった。
「…ここ…どこだ?俺…スペインに戻れたのか?」
パチパチと意識して長い睫毛を強調するようにまばたきをして、ことさらオズオズと言った風に言うと、スペインは少し考えこんで、
「ちょおここやとまずいから、こっちおいで」
と、イギリスの腕を掴んで助け起こすと、少し離れた休憩室に入ってドアの鍵を閉めた。
もしあの頃の自分がこういう状況に陥ったら…と、想像をめぐらして、イギリスはキョロキョロと不安げにあたりを見回してみせる。
それに苦笑してスペインは
「ああ、ここは安全な場所やから安心してええよ。万が一があっても親分が守ったる。
わかっとるやろ?」
と、頭をなでた。
真意はわからないものの、今すぐ排斥しようと考えているわけではないらしい。
あるいは…ここで過去のイングランドに手を出せば、歴史が変わってしまうことを危惧しているのだろうか…。
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