こうして大雑把な計画だけたてて世界会議当日を迎えたイギリスは、いつも早めだがそれよりさらに早く会議場いりする。
そしてほあた☆とステッキを振れば500年前、エリザベス1世の治世の頃の姿に変身だ。
予想と少し違っていたのは、手首にグルグル巻きつけられたロープ。
これは確か…と、イギリスは苦い思い出に苦笑した。
嫁に来たスペイン王の末娘と引き換えにスペインに嫁に送られたイングランドにスペインは馬鹿みたいに優しくて、国同士の政略結婚という形ではあったが、非常に夫婦円満だった。
それはエリザベスが王位に就く時、国体がいないと体裁が悪いからと言われてイングランドに送り返されるまで続いて、それが実はイングランドを国に戻すための嘘だったと気づいたあと、何度もスペインに戻ろうとしたので、よくふん縛られて強制送還されたのだ。
その後…自分だって恋人作ってるくせに、自分だけ好きな相手といるくせに…と泣くまだ少年期のイングランドに手を焼いたエリザベスが、
『ああ、わかったわ。私も恋人と別れるから。
結婚もしないから…というか、あなたと結婚するという形を取って今後男を寄せ付けないから。それでいいわね?』
と、呆れ混じりに言ったのも良い思い出だ。
イングランドが国に戻った時にはすでに20歳を超えていたエリザベスは当然外見年齢は年上で、そのまま頼りない弟の世話を焼くしっかり者の姉のようにイングランドを愛してくれた。
だからイングランドもそれ以上の元夫への執着を断ち切ったのだ。
とは言え…海賊船に乗って海賊と一緒にスペイン船を襲う勇気は当然無く、スペインと対峙することがなかったせいで、今もこんな中途半端な状態なわけだが…それも今日で終わりだ。
今日こそ思い切り罵られて、過去を精算して、新たに友人としての関係を築くのだ。
「さすが俺だよなっ。完璧だ。」
と、窓ガラスに映る若かりし頃の自分の姿に見とれていると聞こえる話し声。
『とにかく…泊めて飯まで食わしたったんやから、準備くらいは手伝い…』
『へいへい。ほんま自分が自分ちに泊まってくの心よく了承なんてした時に、疑ってみるべきやったわ~』
などと似た声で似たようなイントネーション。
まずい!!とイギリスは焦った。
スペインが珍しく早く会議場いりしたのは良い事だが、一緒にいる相手がまずい。
世界最古の同盟相手として非常に長い時を一緒に過ごしてきた相手、ポルトガル。
フランスに次いでイギリスの事をよくみているため、外見が500年前の少年期でも中身が今のイギリスだとバレる可能性が高い気がする。
考えてみれば今日の主催国はポルトガルなので、ポルトガルだって当たり前に早く会議場いりしていると予想するべきだった。
まずい、まずい、まずい!!!
『ほな、コピーよろしくな~』
と、ポルトガルの声と
『しゃあない、行ってくるわ~』
と、スペインの声。
スペインはどうやらコピーを取りに行ったらしく、ガチャっとドアが開いた瞬間、入ってきたのはポルトガルだけである。
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