――今日もまたダメだった。
3月…季節は春めいて、なんとなく浮かれる人々を他人ごとのように見ながら、イギリスは今日もため息をつく。
原因は本日の二国間会議の相手…太陽の国……。
ごくごくわずかだが、フランスとスペインが敵対した時にはイギリスとしては当然のように”フランスの敵”であるスペインについたりはしていたのだが、その頃にはイギリスの脳内で気まずさが凝り固まっていて、その国体を避けたりしたので、関係を改善するようなきっかけもなく、現在に至っている。
が、スペインの側には他意はないらしい。
特に暴言を吐くこともなく…しかし親しい者に向ける笑みを浮かべる事もなく、淡々と国体としての義務を果たしていくその姿に、イギリスの寂しさが募る。
自分と割合と距離が近い国、フランスもプロイセンもスペインとは仲が良い、気のおけない関係なのだ。
自分だけ本当の他人のように距離を取られている現状が嬉しいわけがない。
もうこの際フランスのように喧嘩友達でもいい。
脱他人をしたい。
騙し騙されたという歴史ならフランスとの間でもあるはずだ。
何が違う?
そう考えた時にイギリスは1つの可能性にたどり着いた。
そうだ、喧嘩だ。
正確に言うと双方向での…ではない。
スペインの国体からイギリスの国体である自分がはっきりと罵られたり責められたりという過去がないのだ。
怒られて謝罪する…これが正常な人間関係には必要だ…と、何故かイギリスは思い込んでしまった。
まあ状況によってはそれも正しいと言えなくはないのだが、困ったことにイギリスは他者との人間関係に希薄な島国で…さらになまじ不思議な力を持っていた。
普通にいきなり怒ってくれと言われても相手も困るだろう。
どうすればいい?
相手が腹が立つ状況を思い出させればいい…。
それには…イングランドが海賊を裏で操っていた頃の自分の姿に戻ればいいじゃないかっ!!
他の者からみると、非常にわけがわからない論理だ。
しかしイギリスの周りに他者はなく、一人でそう思い込むとそれはとても良い方法に思えた。
そして…天下の魔法国家にはそれを現実に出来る最強魔法『ほあた☆』があるっ!!
次にスペインに会うのはいつだ~?と手帳をめくれば、幸いにして1週間後に世界会議があった。
イギリスは切羽詰まっていた。
だから全く気付かなかった。
それが4月1日エープリル・フールだということに…。
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