そもそもが貧乏が全て悪いのだと思う。
いや、家的には決して貧乏ではない。
カークランド家はまあまあ裕福な家だ。
仕事に忙しい主人と留守を預かる女主人、そして4人の息子達。
そのうち3人は後妻に入った女主人の連れ子で、末っ子のアーサーだけ父親と亡くなった前妻の子である。
しかも…後妻は元々は名門カークランドの跡取りであった父親の婚約者であった名門の令嬢。
そしてアーサーの母親はそんな父親と熱烈な恋に落ちて周りの反対を押し切って結婚したというおまけ付きである。
食事だっていつも余り物。
お腹いっぱい食べられる事なんてめったにない。
そんなある日のことである。
お城からカークランド家に5通の招待状が届いたのだ。
4人の息子とその母親に宛てた招待状。
それは武器を振り回す事は得意でも城の中のデスクワークはとてもとても苦手な王子様のためのパートナー探しのパーティーの招待状。
国中の主な名家の下は10歳から上は25歳までの少年から青年に送られているその招待状は、無事母親と3人の息子の元へ。
……あれ?あと1通は?
「母上、国中の若い男にお城のパーティの招待状が配られていると街中で話題になっているのですが…」
それは買い物のために賑わう街にでた時にアーサーの耳にも入ってきた。
なので、そう、おそるおそるお伺いをたてたアーサーに、母親と兄3人は冷ややかに言い放ったのである。
「お前がそんなところに行って何になる?」
「これは飽くまで次期国王様のパートナー選びだ。子どもの遊びじゃない。」
「普段掃除や洗濯ばかりしてるお前に何ができるんだ。」
「カークランド家の恥を晒すなっ!」
そして最後に4人揃って言った言葉。
「第一お前はお城へ着ていけるような服は持っていないだろう」
全くもってその通りだった。
父親が再婚して3年。
愛妻が亡くなって家のために再婚した父親は、そんな家庭を避けるように年に1,2度しか帰宅しない。
その帰宅の日は大抵は屋根裏部屋へと追いやられるため、アーサーが着ている服は全て街の貧しい子どもが着ているようなものか、サイズが合わない兄達のお下がりだ。
新しい服を最後に新調したのなんて、母親の葬式の時くらいじゃないだろうか。
暖炉掃除も仕事の一つなため、キレイに着れば少しはマシな服だってススだらけだ。
もちろん綺麗な状態であっても、街の子どもが普段着るような服で城に行ったりはできないのだけれど…。
別にパートナーなんてどうでもいい。
もちろんそこまでではなくても城で下働きでもいい、何か仕事が貰えればそれはそれでラッキーだが、そんな事すら望んではいない。
単に…食べたいっ!!
お腹いっぱいのご馳走をっ!!!
お城のパーティーともなれば随分と素晴らしいご馳走がたくさん出るだろう。
それを食べて食べて食べて食べまくる……ああ…幸せだ。
きゅるるるる~と、そんな妄想をしていると、悲しく腹の虫がなる。
今日は皿を割った罰に食事は抜きだ。
ああ…パーティーに行きたい…。
空腹すぎて痛む胃を押さえながら、アーサーは空腹を忘れるために藁葺のベッドに潜り込んだ。
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