「はぁ?なんでプーちゃんのとこやねん」
年末…ロマーノにどう過ごすのか聞くため電話を入れたらプロイセンのところだった。
年末年始を一緒に過ごすのだと言われて憮然とする。
その前にフランスにもかけたらすでにセーシェルの所だったので、ロマーノがいなければプロイセンにと思っていたら二人一緒なんて、自分だけハブられている気分だ。
と、それでも気を取り直してそう言うと、ロマーノから
「来んな」
と一刀両断される。
それに覆いかぶせるように、どうやら電話を変わったプロイセンが話しだした。
「お前さ、こっち来てる場合じゃなくね?
せっかくフランスいねえんだぞ?イギリス一人じゃん。チャンスだろ」
と言われてスペインは肩を落とす。
「そんなん…フランスおれへんかったら兄ちゃんのとこでも行っとるんちゃう?」
「ポルトガルなら今マカオとラスベガスだ」
「は?自分なんでそんな詳しいん?」
「まあ色々あってな。だから日本の所に行く前に捕まえられればイギリスは一人だぞ?
いい加減捕まえちまえよ、ラテン男。見ててじれってえ」
「プーちゃんに言われた無いわ~。でもそうやな。そろそろ頃合いやな」
自国の王女が嫁いだ時に代わりに嫁にもらってからもう数百年。
某有名な海戦でその仲は破綻したものと誰しもが思っている……
…けどな、カトリックは離婚なんて許してへんで?
人間の事情など知ったこっちゃない。
スペインがあの子と結婚した時代のカトリックは離婚など認めては居なかった。
そんな中で結んだ婚姻だ。
誰がなんと言おうとイングランドは自分の嫁である。
国情で一緒にはいられない時期が続いたにしても、他人のフリをしなければならない時期が続いたにしても、それは天地がひっくり返ろうと変わらぬ事実だ。
それでも避けられ続け、常に周りに人がいる状態でなかなか行動出来ず、ジリジリイライラしながらも、きっかけもつかめなかったわけだが、確かにそうだ。
ここまでイギリスの周りに他の国がいないという事も少ない。
もうそろそろ人間達に合わせてやらないでも良い時代でもあるし、これは好機だっ!
「ほな、嫁さん迎えに行こか~」
思い切ってしまうとスペインの行動は早かった。
やはりそのあたりはラテン男なのだ。
携帯を切ると、スペインは年に一度は体に合わせて作らせているタキシードをきっちり着こむ。
秘かにフランスにサイズを測らせて、こちらも毎年サイズをきちんと直させている指輪。
個人的には形式などどうでもいいのだが、ロマンティストなあの子はこういうのを非常に気にする。
相手の好みに合わせたサプライズは良い夫の条件だ。
まずは渡す11本の薔薇の花の意味は【最愛】。
電話で手配させたあの子を連れて行く予定の別荘には【何度生まれ変わっても貴方を愛す】の意味合いを持つ999本の薔薇も手配させる。
無駄遣いというなかれ。
普段は爪の先に火を灯すようにしていても、使うべき時には金は惜しむべからず。
長い時を生きる国々は、実は個人資産という意味ではそこそこ持っている。
その中でも覇権を握り、新大陸の富を享受したスペインは、実はたいそうな宝石持ちだ。
普段は金庫の肥やしになっているわけだが…現金で足りなければそれを1つ2つ売れば良い。
長い長い時を生きるわけだから、使いすぎれば当然無くなる日も来るだろうし、普段は慎ましやかに暮らすべきだが、今回は数百年ぶりに愛妻を迎えに行くのだ。
久々に贅沢もいいはずだ。
すっかり支度を終えたスペインは美容院で髪を整え、イギリス行きのチケットを取る。
往路は一人分だが、復路はもちろん二人分だ。
万が一にでも行き違いがないように、大事な話があるから自宅に居て欲しい旨をメールする。
そうしておいてスペインは一路、愛しい愛妻の家を目指したのである。
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