5つのペナルティ_5

クリスマスは北欧のフィンランドの家に招かれて、サンタの仕事で不在な家主の代わりに立ち働く北欧組、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、アイスランド、そして彼らに預けているシーランドと、さらにノルウェーの誘いで妖精さん達も一緒に久々に楽しく過ごした。

そのままニューイヤーもと誘われたが、その後例年正月に日本に行っているので、いったんイギリスの家に戻ったのだが、正解だったようだ。

ちょうど家に着いた時に家の電話が鳴った。
コートを脱ぐ間もないまま出てみれば、涙声のアメリカだ。

何かあったのだろうか…。

いつもなら子供扱いを嫌うのに、今日は随分と甘えたのようで、シャクリをあげながら話をしたい、会いたいと言う。

もちろんそんな可愛い育て子を突き放す理由など無い。
気をつけてくるように言って電話を切ると、コートを脱いで簡単に荷解きだけして、リクエストのミルクティの準備をしながら到着を待つ。


こうして数時間後、イギリスの家にたどり着いた愛し子は大きな空色の目にいっぱいの涙をたたえていた。

「よく来たな」
と、迎えてやると、すでに自分より大きくなっているその子はぎゅうっと泣きながらイギリスに抱きついてきた。


「日本をね、怒らせちゃったんだぞ。わざとじゃなかったんだけど…」

リクエスト通り甘い甘いミルクティを飲みながらそう言うアメリカは可愛い。

そうか、そうか、そうだよな。
お前はわざと悪い事をするような子じゃない。
ちょっと間違っちゃっただけだよな、と、心の中で相槌を打ちながら先を促せば、どうやらその失態のペナルティを5つ出されたらしい。


「でもね、俺頑張ったんだぞっ!
もう普通無理って思うようなものもあったけど頑張ったんだっ」

「ああ、そうだよな、昔からお前は頑張りやだったもんな」
と、少し子どもに対するような言い方をしても、うんうんと頷くあたり、かなり可愛いと思う。


「それでね、4つまでは終わらせてあと1つになったんだ」
と得意気に言われれば、もうその可愛さ悶絶モノだ。

「でも…」
と、そこでしょげかえるアメリカ。
可愛い、もう可愛すぎて転がり回りそうだ。

「5つ目が難しいのか?日本に俺から内容変えてもらえるように頼んでやろうか?

先回りして手加減してもらおうかと聞いてやる。
ダメな親の典型である。

「いや、約束は約束だから」
と、そこで首を横にふる育て子にイギリスは感動する。

そうだ、アメリカはそんなすぐ諦めてしまうような子じゃない。
こいつはどんな困難にでも立ち向かおうとする頑張りやなんだ。

と、感動しつつも、そうだな、頑張れよ、と、エールを送ると、アメリカはちらりと上目遣いにイギリスをみつめた。


「実は…それでイギリスにお願いがあって…」
そんな健気な育て子からお願いなどと言われて断れるはずもなく
「おう、俺に出来ることならなんでも協力してやるぞ」
と、簡単に言ってしまったのが、イギリスの運の尽きだった。

本当かいっ?!絶対だぞ☆
と、とたんに元気になる愛し子。

「ああ、それで?何をして欲しいんだ?」
と、どうやら自分に頼ってこられていることにご機嫌で答えるイギリスに、アメリカは恐ろしい事実を教えてくれた。

「実はね、5つ目のペナルティって、【イギリスにスペインに対して愛の告白をさせる】ってことなんだ。
なんでも協力してくれるんだよねっ?頼んだんだぞ、イギリス。
じゃ、俺日本の所に報告してくるからっ!」


ちょ、待ったっ!!!

と、イギリスが手を伸ばした時にはアメリカは颯爽とした様子ですでにイギリス邸を出て、自家用機に飛び乗っていた。


うそ…だろおおおぉぉ~~~!!!


こうしてイギリスの絶叫だけが、静かなイングリッシュガーデンに響いたのだった。





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