次の行き先はイタリア。
【ペナルティ4.ロマーノにプロイセン式鍛錬を受けさせた後、年末年始の料理を振る舞わさせる】
うん…無理なんだぞ。
アメリカは遠い目を空に向けた。
プロイセン式訓練…アメリカも受けた事があるが、キツかった。
ひっじょ~~~うにキツかった。
あれを無意味に受けてくれそうなのはドイツくらいだ。
さっきの様子を見れば香港あたりなら大金を詰めば受けてくれるかもしれない…まあ途中でエスケープされるかもしれないが。
だが相手は鍛錬大好きなドイツでも金で動く香港でもない。
同じヘタレでもまだ北イタリアの方ならドイツを餌にすれば動いてくれなくもないかもしれないが、指名は南イタリアだ。
ドイツ自体をよく思ってないあのイタリア兄に、さらに大っ嫌いな鍛錬を受けさせるって何なんだ、その無茶ぶり。
とりあえず…とりあえずは行こう。
そして…無防備なところを捕まえて縛り上げ、そのままドイツへ。
「…で?お前一体何やってんだ?」
と、プロイセンには呆れた目で見られ、無事プロイセンに保護され開放されたロマーノには警戒心丸出しの目で睨まれる。
居たたまれない。
ヒーローが誘拐なんて論外だ。
それでも…ここで放り出すわけにはいかない。
恥を忍んで全部素直に打ち明けてみれば、プロイセンとロマーノ、二人揃って大きくため息をつかれた。
「仕方ねえ…。材料費は全部お前持ちな。
俺が満足するような最高級の素材揃えっから、それなりの額覚悟しとけよ?」
と、驚いた事にまず口を開いたのはロマーノだった。
「お?お兄様やっちゃう?」
と、笑うプロイセンに、ロマーノは仕方無えだろ、と、眉を寄せてみせる。
「いくら不意をつかれたとはいえ、こんなに簡単に捕まるようじゃ、俺もちょっと体鈍ってんだろうし?
若造にピシっと見せるとこ見せとかなきゃ締まんねえ。
その代わりお前もやれよ?」
クシャクシャっとまるで小さな頃にイギリスにされたように、頭を乱暴に撫でられて、普段のように子ども扱いするなと怒るのも忘れて、アメリカはコクコクと頷いた。
枢軸兄組…と非公式に呼ばれている二人は、どうやら本当に兄気質だったらしい。
こうしてロマーノと二人プロイセン式の鍛錬。
先にへばったのは驚いた事にアメリカの方だった。
「…君…ヘタレとか言うの嘘だったのかい?」
と、訓練後、ぐったりとへたり込んで言うアメリカに、さすがに息は乱しながらもきちんと体をほぐすように整理体操をしていたロマーノは、小さく鼻を鳴らした。
「逃げんのもな、体力いんだぞ、馬鹿野郎。」
ああ、本当に色々勉強になった気がするんだぞ、日本。
こうしてその日は二人してドイツ宅にとめてもらい、翌日ロマーノに言われるままに食材を揃え終わると、アメリカはドイツ宅を後にした。
あと1つ。あと1つだ。
年内には終わらせて、楽しい正月を迎えるんだぞ。
心身ともにくたびれて泣きそうだが、それを励みにおそるおそるリストを覗きこむ。
最後のペナルティは……
【ペナルティ5.イギリスにスペインに対して愛の告白をさせる】
オ~マイガ~ッ!!!!
アメリカは頭を抱えて泣いた。
今度こそ…今度こそ無理だ。
何故よりによって世界でも有数の不仲と言われる二人なんだっ!
あと一つでようやくこの苦行も終わる…そう安心していたところに最後の難関で、アメリカはがっくりとうなだれた。
でも…これをやらなければイベントにお出入り禁止……
ここまでどれだけ頑張った?
あと一歩…あと一歩なんだ…
「ハロ~、イギリス、話があるんだ、これから行っても良いかい?」
泣きながらアポ取りをしてこられて、イギリスもさすがにぎょっとしたようだが、
「ああ、いいぞ。大丈夫か?俺の方が行くか?それとも迎えに行ってやろうか?」
と、まるで昔のような口調で心配してくる。
いつもなら、子供扱いするなと怒るところだが、今はその甘やかしてくれるところにホッとする。
「大丈夫なんだぞ…。
でも寒いんだ。ミルクティいれておいてくれるかい?うんと甘いのがいいんだぞ」
と言うと、わかった、気をつけて来いよと、久々に聞く優しい穏やかな声にまた泣けてきた。
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