5つのペナルティ_1

あ~な~た~は~~!!!なんてことしてくれたんですかっ!!!

八つ橋なんてもう欠片もないほど吹っ飛んだ激怒した顔の日本。
PCのディスプレイを指差されてアメリカはすくみあがった。

「馬鹿ッ?!馬鹿ですかっ?!!
もうアレですねっ!そういう愚か者は次回からイベント時期は出入り禁止ですねっ!!!

と、ものすごい剣幕で怒鳴りつけられて、父さん…もといイギリスにだって怒鳴られた事なかったのに…状態で育ってきたおぼっちゃまは涙目だ。


(フランス、フランス、なんで日本はこんなに怒っているんだい?)

と、心の声で激おこ状態の日本の横でため息をつくフランスに尋ねれば、そこはさすがに世界のお兄さん、もう一人のアメリカの育ての親でもあるフランスは、あのねぇ…と、大きくため息をつきながらも、ディスプレイに目を落として諭すように言った。

「アメリカ~、これはなに?」

と、フランスが指さした先にはネットオークション。

出品者はHero
出品物は昨日のオタクのイベントで売り出された人気サークルSiojakeの最新刊だ。

日本が本田菊として主催しているこのサークルの本はいつも人気で並んでも売り切れて買えないファンが続出している。


「このHeroってお前だろ?アメリカ」
「そう…だけど…」

siojakeの最新刊を売ってるよ?これは?」

「ああ、これは、俺がちゃんと並んで買った本なんだぞ。
そのあと日本がせっかく日本まで来たからって同じ物をくれたから、自分が買った方を売りに出しただけだぞ。
同じ物2冊持ってても仕方ないし、人気サークルの本だから欲しい人の手に渡った方がいいじゃないか」

「サークルSiojakeは自分のところの本をオークションに出さないようにって書いてあるでしょ?
ちゃんと読んでないの?
しかもお前、上限価格の設定もせずにただ出品してるから、元は1000円の本が10000円まで値上がってるし
これじゃあ転売目的って思われても仕方ないよ?」

はぁ~と落ちてきた髪をかきあげるフランシスに、中身しか見てなかった…と、まあ実に彼らしい答えを返すアメリカ。


「……悪かったよ。出品取り下げるよ」
「当たり前ですっ!」

と、まだ頭から湯気をだしている日本に、PC借りるよ、と、オークションサイトにログインして出品を取り下げるアメリカ。


「悪かったよ。もう出品取り下げたから大丈夫だろ?」
とさすがにおずおずと言うアメリカに、日本は黙ってスマホを突きつけた。

そこには日本のTwitter画面。

しっかりSiojakeの最新刊がオークションに出ていることと、その写真がTLをに流れていて、アメリカはOh!と額に手を当てて天井を仰いだ。

「こういうのは広まるものなんですよ?」
と、普段優しい日本に苛立ったため息をつかれて、アメリカはうなだれた。

「…ごめん…」
「…反省してますか?」
「もちろんだぞ。俺は反省してないなら謝ったりしないんだぞ」

「……」
「…日本?」

少し考えこむように黙る日本にアメリカが不安を覚えた頃、日本はスッと懐からリストを取り出した。


「…これを」
「なんなんだい?」
「反省は反省として、やってしまった事が消えるわけではありません。
わかってますよね?
オークション出品しないようにと公にお願いした書き手本人に本を貰った人間が出品してしまったんですからね?
なので5つのペナルティを科しますので、これを全部クリアしたら今回だけは許して差し上げます。
もちろん、やるかどうかはアメリカさんの自由ですよ?
ただし…これをやらなければ、少なくともSiojakeの参加するイベントにはアメリカさんは出入り禁止になりますが?」

多数のジャンルで最大手なレベルの有名サークルSiojake

主だったオタクの祭典には顔を出しているため、そうなると実質オタクの祭典にお出入り禁止を申し渡されたのも一緒だ。
アニメ大好き漫画大好き、オタク御三家と言われるアメリカに拒否権はなかった。

しかしちらりとリストを見て青ざめる。

「これ…本当にやるのかい?」
と、普段なら泣き落とされてくれるポチのような甘えた年下目線というやつを向けてみたが、今回だけはダメだった。

「もちろん。本当にやったかどうかはあとで確認させていただきますからね」
と、本気で怒っているらしい。

オタク関係の事でだけは日本を怒らせてはならない…そのことをアメリカが思い知った瞬間だった。



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