杞憂
…あいつ大丈夫か……
スペインがアリスちゃんに張り付いている。
思い切り抱え込んでいる。
荷物の半分以上を俺様に担がせて……。
まあ、そのほとんどが旅の必需品、食料だからいいんだけどよ。
結局スペインも超絶つえぇ俺様と一緒の方が道中安全安心万全だと思ったんだろう。
俺らは合流する事になった。
もちろんスペインの連れの女神様、もといアリスちゃんも一緒だ。
それは良い。
俺の連れのトリックが信用できねえから、紹介方法も段階を踏んでと言うのも了承した。
俺様天才だからな。
その手順もばっちりだ。
スペインは本来そんなまどろっこしい事やる奴じゃねえ。
今回そんな風に念には念をいれようとしてんのはアリスちゃんのためだ。
あの子はどうやらどこぞから騙されて誘拐されてきて、街中で売られそうになっていたのをスペインが助けたらしい。
ほとんど外出た事ねえって箱入りで、神聖魔法や治癒魔法は家庭教師から教わったとのこと。
っつ~ことは……もしかして、とんでもねえお嬢様なのかもしれない。
なにしろ剣と魔法の世界っつっても、治癒魔法の使い手は少ねえ。
俺様が街で資金稼ぎをしている間に会った治癒魔法の使い手は、唯一街の教会の神父様のみだった。
便利だから教えてもらえねえかと頼んでみたが、この世界の女神様、イルス様の敬虔な信者で、しかもしかるべき身元の人間じゃないと教えられねえときた。
そんなもんを普通に教えられて育ってんだぜ?
下手するとどこぞの神子様とかそんな感じなのかもな。
目に付いたから助けて見たら、実はとんでもねえ重要人物だった。
…なんてのはRPGの王道だろ。
…と、冷静な俺様は分析して、礼を尽くしてお守りしないとならねえ相手だと思うわけなんだが、スペインのソレは少し違う気がする。
相手がお姫様だろうとただの街娘だろうと関係なく、相手に執着している。
いきなり見ていただけの俺様を斧で殴り倒し、礼をしようと手に口づけようとした俺様にボッコの骨を投げつけて昏倒させ、アリスちゃんがイケメンな俺様に微笑みかけるだけで、腕を掴んで引っ張って行くくらい…。
あ~、もうハッキリ言っちまうと普通に惚れてんじゃね?って思うんだが…。
これが俺らの世界での出来事なら、寿命の違いっつ~のがあって添い遂げる事はできねえけど、まあ100年弱の間でも一緒に過ごして看取ってやるくらいは…と、温かい目でみといてやるけどな、ここは異世界なわけだから…。
俺らは魔王を倒したらすぐ元の世界に帰る、つまりアリスちゃんとはお別れなわけだし、あまりに心を移すのはどうかと思う。
ていうか…あいつ連れて帰るとか、逆に自分が残るとか駄々こねそうで怖え。
なんだか面倒な事になりそうだ。
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