そう、決してイギリスを守りたいわけではない。
自分と可愛い子分とその所属組織EUのためだ。
脳内でそんな言い訳をしていたからだろうか。
随分と難しい顔になっていたらしく、普段へらへらしているスペインのそんな表情に、プロイセンはまたあっさり騙されてくれたらしい。
実は懐に入れた者に関しては情が深く、全身全霊で守ろうとするスペインが、かよわくも美しい少女を守ろうとしているのだと、勝手に脳内補完をして、プロイセンは
「当然だよな。」
と、大きく頷き、会議中に飛ばされてフリードリッヒ2世に会った事、世界を水没させないために魔王を倒せと言われた事、他国も同じようにどこかに飛ばされているとか魔王を倒せば褒美がもらえるとかなどの、その他に聞いた情報、そして…トリックの事など、包み隠さず報告した。
そして全てを話し終えた時、それまで黙って話を聞いていたスペインがプロイセンに言った言葉は
「そのトリックって言う奴信用できるん?」
である。
はい、お説ごもっともです。
スペインにすら突っ込まれるのも当たり前なくらい怪しいとプロイセンも思う。
自分だって怪しいと思いつつ同行していたのだ。
怪しくないと説得する理由が思いつかない。
「あ~…まあ信用できるかどうかは別にして……」
「あかんやんっ!」
最後まで言わせてもらえず、きっぱりと断言される。
そうだよなぁ…普通そうだよなぁ…
と、プロイセンは肩を落とした。
プロイセンだってもし自分がどこかの令嬢を護衛しながら旅をしていて、トリックのような奴を同行させたいと言われたら断固として断る。
絶対に拒否する。
でも……と、プロイセンは思った。
怪しくない…と断言できる理由などどこにも欠片もないのだが、奴は確かにここまでプロイセンを助けてくれたのだ。
トリックがいなければ冒険者ギルドで稼ぐどころか、その日泊まる場所、食べる物すら、いきなり確保するのは難しかっただろうし、今頃まだ旅に必要な諸々が揃わず街中でウロウロしていただろう。
何かやらかした…と言うならとにかく、ただ身元保証が出来ないと言うだけで切り捨てるのはためらわれる程度には、プロイセンはトリックに対して仲間意識を持っていた。
トリックを切りたくない…だが目的のためにはスペインと組むのが得策だ。
グルグルとそんな葛藤が脳内を走る。
が、救いの手は意外なところから入った。
いや、意外ではない。
彼女は天使で女神なのだから…。
「トーニョさん、ちょっと待って下さい。」
と、それまで二人の会話に全く口をはさまなかった令嬢、アリスが口を開いた。
アリスはにこっとプロイセンに女神の微笑みを浮かべると言ってくれる。
「その…トリックさん…は、これまでギルベルトさんを助けて下さったんでしょう?
十分信用できる方なのでは?」
美しい…本当に心根が美しい…女神だ……と、感動するプロイセン。
一方で
…こいつ…何考えとるん?
と、いぶかしみ、そしてまた若干不機嫌になるスペイン。
確かにプロイセンを取り込む事、危機感のない無邪気なキャラを演じてアリスを疑わせない事は大切だが、だからと言って信用できない者を身の内に入れるのは危険すぎる。
そもそも、その連れを追いだしたくないと言うプロイセンの気持ちを、怪しいから遠ざけた方が良いと言うスペインの判断より優先するのか?
「アリス、ちょお、来て。」
と、その腕を掴んで立たせ、スペインはイギリスを連れて少しプロイセンから離れた。
0 件のコメント :
コメントを投稿