青い大地の果てにあるものGA_11_2

ロヴィーノ・ヴァルガスは悩んでいた。

何故?何故だ??
と、思う。

自分は確か絶賛不仲な相手に酔った勢いで暴言を吐いて酔い潰れて…おそらく基地内の風紀上宜しくないと思われたのだろう。

相手が自室へ仕方なく回収して行って、そこで寝込んで吐いて……

自分がそれをやられたら絶対に二度と関わりたくない、もしくは思い切り罵ると思われるような事をしまくったはずなのだが、今日も昼の12時少し前に内線を取った部下が呼びに来る。

――フリーダムのアントーニョ本部長が午後打ち合わせをしたいそうです。




ざわざわと賑わう食堂内を避けて、ロヴィーノは指定されたバルコニーの席に向かう。

普段なら部内のデスクで栄養補助食品を齧っていたりするのだが、あれから隔日くらいにはこうしてアントーニョに呼び出され、食堂のバルコニー席で食事を取るようになった。

今日はハムとチーズのパニーニとサラダ。
それにコーヒー。

成人男性としては少ない気もするが、これまであまり昼食をまともに食べる習慣がなかったのと、もう一つ、ロヴィーノが自身が取ってくるのを少なめにする理由がある。



「ロヴィー!こっちやでーー!!!」

ロヴィーノがガラス戸からバルコニーに出ると、大声で叫びながらブンブンと手を振る男。

アントーニョ・ヘルナンデス・カリエド、ブレイン本部長。

本来ならこんな食堂の端っこでひっそり食事を取っているようなタイプではない。
いつも周りには人がいて、楽しげな笑い声に囲まれている。
面倒見が良くて部下に好かれていて、一人称が“親分”だというくらいの男だ。

その人懐っこくも人気者の男に、ロヴィーノは酔って暴言を吐いて以来、変に懐かれているようで、しょっちゅうこうして呼びだされては一緒にランチを摂り、そのままトップ会談と称してアントーニョの部屋のすさまじく大きなベッドの上でゴロゴロと話をしながら仮眠をとり、解散。

一応言っておくと大の男が4人くらい眠れるのではないかと思えるほど大きなベッドなので雑魚寝するだけで、別に色っぽい話ではない。

単にアントーニョいわく

――効率良く仕事やろうと思うたら、休息は大事やで。部内で摂れへんのやったら、ここで摂って行き。

と、どうやら自身もベテランを差し置いての本部長就任で色々あった時期もあったのだろう。

今現在、重箱の隅をつつくように少しでも気を抜いているところを見せると色々言われるために休息の摂れないロヴィーノを心配してくれているらしい…というのはなんとなくみてとれる。

元々面倒見の良い性格だけあって、目に付いたら放っておけなくなったのだろうとは思うが、ロヴィーノ自身の方はというと、そういう扱いに慣れていなくて、自分が特別なわけではないとちゃんとわかっているのに、なんとなく意識をしてしまう。

ダメだ…相手に過度の期待をするなと思っても、これまでそんな風に優しくされたことのないのもあって、自分の方はだんだんと相手を特別にみてしまいがちになるのが辛い。

かといって距離を取ろうにも、始終一緒に居てくれるほど仲の良い相手などいないロヴィーノはアントーニョの誘いを断れない。

今日もそんな風にため息をつきながらアントーニョの部屋で休息を摂って、ブレインに戻る帰り道、自然と下を向いてしまう視界に入って来たのは廊下に落ちていた一枚の写真だった。

…なんだろう……
と、拾いあげてみると、最近極東支部から転属してきた少年ジャスティスの写真。

何かのパーティの時に撮ったものだろうか…

ふんだんにフリルやレースを使った服に身を包んでちょっとした余興とばかりにふんわりとレースのヴェールまで被って悪戯っぽく笑っている姿は、元々童顔な事も相まって、同性のロヴィーノから見ても大変愛らしい。

本部ジャスティスの中でも最強と言われる浮いた噂の一つもなかったギルベルトが恋人として大切に大切にしているのも分かる気がする。

人づきあいがあまり得意ではなく、しばしば皮肉を口にしてしまうところがあるのは自分と似ているが、それでもたまにウィットに飛んだ冗談で場を和ませたりできるだけ、彼、アーサーの方が自分よりは社交的で人に好かれるのかもしれない…

それでも自分も女顔と言われる部類の容姿ではあることだし、こんな風に愛らしい格好をすれば少しは特別に見てもらえるかも……と一瞬思って、すぐそんな事を考える自分に、何を考えているんだ…と、赤くなって首を横に振る。

…とりあえず…これは本人に返した方が良いのか…と、拾った写真を手にしたまま、ロヴィーノは部に戻る足を速めた。

…それを廊下の片隅で覗いている人影の事など、当然気づく事はないままに………


 Before <<<      >>> Next (12月14日0時公開) 




0 件のコメント :

コメントを投稿