その騒動はとある1人の腐女…げふんげふん…極東ブレインの女性のちょっとした思いつきによる行動から引き起こされた。
ことのきっかけは彼女が自身のアーサー君コレクションを非常時に備えて自分しか持ち出せない自室から気づいた人が避難させてくれるであろう女性ジャスティス控室、別名【乙女ジャーナル編集室】に移動させた時のこと……
大量の写真の中でもレア中のレア(遠子談)である毎年のハローウィンイベントでのアーサー君の仮装写真の中の1枚を廊下に落としてしまい、それをたまたま通りがかったギルベルトに拾われてしまったことである。
写真を返して欲しい…
いや、写真が欲しいなら他のならあげても良いのだが、それは自分が大切にコレクションしているレア中のレアなので、他の写真と交換して欲しい。
そう言えば良いだけの話なのだが、何故か彼女はそれを躊躇する。
内気な自分には無理…と。
そこで何故か彼女は宣言した。
いきなりギルベルトさんに写真交換しましょうとか言えないから…とりあえず先に弱みを握っておこうかとおもうんですけど!!
その時点でそれを聞いていた桜は耳にシャッターを下ろした。
お館様に仕える家の宗家の人間にあるまじきことで、今実家を継いでいるであろう実兄が聞いたら激怒するであろうが、あまりのわけのわからなさに、
申し訳ありません。後はよろしくお願いいたします、お館様…
と、心の中でギルベルトに詫びをいれながら……聞かなかったフリをする事にしたのだ。
だが桜が聞こうと聞くまいと、遠子は止まらない。
右手には可愛らしくフリルとレースで着飾ったアーサーくん、左手には紳士的に着飾ったアーサーくんのブロマイドを持ち、先日の廊下へGo!
ブレインもフリーダムも勤務中なので通るのはジャスティスくらいだろうと踏んでのことだ。
『二枚ずつお迎えしているとは言え、今は亡き極東ブレインの高印刷加工技術で完璧に作成された貴重なブロマイド達…。元気でね……』
と、まるで子どもを抱きしめる母親のごとく両方を一度胸元に抱きしめると、遠子はそれを廊下の左端と右端に設置して物影で獲物を待った。
そう、その脳裏には他のジャスティスが通るかも…などという考えはない。
脳内にあるのはギルベルトがどちらを選ぶのか…という好奇心と、どのタイミングで出て行くか…ということだけである。
……が、現実とはしばしば人の思惑を裏切るものである。
息をひそめて廊下の曲がり角に隠れて待つ遠子の目の前に現れたのは、なんとブレイン本部長ロヴィーノその人だ。
何故こんな時間にブレイン本部長が廊下をウロウロとしている?!
…と、言うと、トップ会談…という名目のもとに一緒にこっそり休憩を取っていたフリーダムの本部長アントーニョの元からブレインに戻る途中なのだが、もちろん遠子はそんな事は知らない。
何故?ええっ?!これまずいんじゃないですっ?!
と、焦るも、何か考え事をしつつ俯き加減で歩いていたロヴィーノはふと廊下の端にある写真に目を止めてしまう。
やばっ!と一瞬思うも、次にそれを拾ってマジマジと見るロヴィーノの顔が何故か赤面するに至ると、むくむくと沸き起こる別の感情。
え?ええっ???
何故そこで赤くなるんです?
私がそこに置いたのは確か可愛らしくフリルとレースで着飾ったアーサーくん
であって…アーサー君のセミヌードとかきわどい写真ではなかったはず!!!
い、いや、そういう写真を持っているかどうかは別にして…ですね…と、こっそりげふんげふんと誰にともなく脳内で言い訳をする遠子。
とりあえず写真は間違いない。
普通の(?)可愛らしくフリルとレースで着飾ったアーサーくんのブロマイドだ。
え?ええ?そこで赤くなっちゃうってことは、もしかしてアレです?!
ロヴィーノ本部長までアレなんですっ?!
私のアーサー君を巡ってジャスティス最強vsブレイン本部長の戦いとか勃発しちゃったりするんですかっ?!!
いや、基本的にはギルアサですけどね、でもギルアサ←ロヴィもイケますし、途中ロヴィアサ色が入っちゃったりとかでも全然イケますですよっ!!!
この時点で彼女の脳内からは当初の目的は完全に消え去った。
脳内に浮かぶのは
『私のアーサー君総受けとか何それ美味しいっ!!!』の言葉…
そう…彼女はギルアサ民という以前に、重度のアーサー厨だった…。
こうして意気揚々と【乙女ジャーナル編集部】へ駆け込む遠子。
「桜さんっ!事件ですよっ!!!」
とキラキラした目でたまたまそこにいた桜にそう言って、
「…嬉しそうに物騒な事叫ばないで下さい……」
と、大きくため息をつかれる事になる。
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