それぞれの感情
「今回のギル、怖かったよな。
珍しくキレてたか?」
とりあえず一応簡単調書を取られて開放されたロヴィーノは、まだシワを寄せているギルベルトの眉間を指でグリグリとする。
そりゃ、俺だってアーサーにスタンガンなんて使われたって聞いた時には腹たったけどさ」
「あ?そうじゃねえよ」
ギルベルトは前を行くアントーニョとアーサーにチラリと視線を向けると、
「アーサーに加えられた危害について怒んのはトーニョの仕事だろうよ」
と肩をすくめた。
「んじゃ、何むかついてんだよ」
聞いてくるロヴィーノにギルベルトはぽか~んと呆けた。
「お前それ言っちゃう?」
「んだよ?」
「あのな~、俺様は自分の相棒をコケにされてニコニコしてられっほど大人じゃねえっつ~の」
「はぁあ??」
「アーサーはさ、確かに心配はするわけなんだけどな。
ぶっちゃけっと、なんかあったらお前よりアーサーの心配すると思うんだわ、俺様。
お前は相棒でさ、必要なら手は貸すし、背中くれえは押すかもしんねえけどさ、ただただ一方的にお守りしちゃおうって気はねえんだ。
でも…この俺様が信用して手組む事にした奴だからな。
コケにされてムカツクのはお前が一番だ。
自分がコケにされたのも同じだからな」
少し気恥ずかしそうに…それでも紡ぐその言葉が嘘ではないという事が何故だか伝わってきた。
相棒…ギルベルトがその言葉を使う重みを、ロヴィーノは今更ながら理解した気がした。
頼るけど頼られもして、その関係は一方的じゃなく容易にリバースする。
必要とされている…。
「そういうの…ダメか?」
「いや…ダメじゃねえ…っていうか、いいんじゃね?俺ららしくてさ」
思えばアントーニョといる時は、安心安全だった代わりに常に劣等感がつきまとっていた気がする。
いつもいつも、ダメなロヴィがかわええんや…というアントーニョに甘えて一人で立てなくなって、いなくなることに常に怯えていた。
しかしギルベルトは暗に自分に立てと言う。
一緒にやっていこうと背中を押してくれる。
まだ能力的には全然追いつかないが、それでもあがいて見ようと思わせてくれるのだ。
そんな関係が心地よい。
ああ、悪くねえな…と、ロヴィーノは小さく笑った。
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