ヤンデレパニック―私のお兄ちゃん【後編】_8

「ギルちゃんっ!警察呼んでっ!!

「どうしたんだ?!」
ギルベルトはついたてに駆け寄って一瞬迷い、しかしすぐ意を決した様に中に入った。



「これ…」
アントーニョが背中の肩の少し下あたりを指差す。

「多分…スタンガンとかそういうのの跡やと思うわ。意識失ったのはそのせいや」
そのアントーニョの言葉が終わる前にギルベルトはすでに携帯を取り出している。


「もしもし…お忙しいところ本当に申し訳ありません、ギルベルトです。
今聖星女学園にいるんですが…傷害事件として捜査員を送って頂きたい。
詳細は…生徒がスタンガンのようなもので気を失わさせられて屋上に放置されました。
それ以上の被害は何もないんですが…いたずらにしては使用した物が物ですし、悪質すぎますし、二次被害の怖れもありますから。
あとできれば…非公式に俺に仕切らせて頂けると嬉しいんですが
今回の愚か者には絶対に警察の牢の中で人生後悔させてやりたいので」

ギルベルトのキツい表情がいつもにもましてキツくなっている。
電話の相手は海陽のOBで本庁の警視、サディクだ。

『察するに…被害者がアーサーか?』
電話の向こうでサディクが聞く。

「はい。」
即答するギルベルト。

サディクが
『”法的な域を超えて”暴走する男ではないよな?お前は』
と、確認を取ってくるのに、ギルベルトは

「もちろん。そんな愚か者のために自分が犯罪者になるつもりはありません」
ときっぱり言い切った。

『わかった。多少慣れてた方が使いやすいだろうし、トーリスを送ってやる』
かなり無理な要請を、それでもサディクは聞いてくれるらしい。

「ありがとうございます。
ではこちらでも学校側に話をしておきますので、宜しくお願いします」

厳しい顔で電話を切ったギルベルトを見上げるエリザ。


「ということで…学校側への事態の説明と報告を頼むわ、エリザ」
ギルベルトは言って制服のポケットからスチャっと手袋を出してはめた。




とりあえずアーサーを着替えさせてギルベルトはエリザとアントーニョと共にアーサーを連れて職員室へと向かう。

事情を説明するエリザに青くなる教員一同。


「警察…ですか…。なるべく大げさにならない方向で無理ですか?」

まあ学校側としては当然の反応だ。

「被疑者の確保を先送りにして二次被害を出す方が問題が大きくなると思いますが?」
ギルベルトが言うと、さらに学校側は青くなる。

そこで厳しい顔で詰め寄るギルベルトの肩をポンと軽く叩いて、アーサーが一歩前に出た。


「とりあえず…現場は屋上なので警察には主に屋上の封鎖と屋上の調査をしてもらって、校内には一応屋上で怪しい人物がスタンガンで人に怪我をさせたのであまり人通りのない所に一人で行かない様にという注意だけうながして下さい。
その程度なら学校内に不審な人物が学祭に乗じて紛れ込んだ事故ということですまされますし、問題ありませんよね?」

にこやかに妥協案を出すアーサーにホッとしたように了承する校長。

そして最終的に学校側も折れて了承した。



ギルベルトはそこで学校側の要請を受け入れ、トーリスにはなるべく目立たない形での来校を要請する。

トーリス達はすでに出てしまっていたものの、サイレンを鳴らさずこっそり学校に入り、そのまま職員室入りする。



「お待たせ致しましたっ!お疲れさまです、ギルベルトさん。
本日も宜しくお願い致します」
相変わらず腰の低いトーリスにギルベルトは少し苦笑した。

「いえ、こちらこそ宜しくお願いします」

ギルベルトはトーリスに頭を下げて、校長に紹介。
それから事のあらましについて説明する。


「ではとりあえず屋上封鎖させます」
と、トーリスが敬礼して出て行くと、ギルベルト達もいったん教室に戻る。

そしてエリザとギルベルト、アントーニョとアーサーに分かれて情報を集めようと相談していざ分かれようとした瞬間、内ポケットに入れた携帯が着信音を鳴り響かせた。





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